研究課題
生命現象を理解するには、構成要素である生体粒子が機能を発現している状態の構造を捉えることが不可欠である。超短パルスのX線レーザーを利用したコヒーレントX線回折イメージングは、10ナノメートルからマイクロメートルのスケールで起こる生命現象を解き明かすポテンシャルをもつ。本研究では、その実現のために、X線レーザー回折で得られる2次元スナップショットから、生体粒子構造をモデリングし、機能に関わる構造情報を抽出する方法論を開発し、X線自由電子レーザー施設SACLAの実験データ解析に適用することを目的とする。平成29年度までに、物質構造を球状の疎視化粒子の集合体としてモデリングし、その疎視化粒子の配置を回折パターンに対して最適化する手法の開発を行った。平成30年度は、既知情報の制約を加えるモジュールを組み込んだ。さらに、疎視化粒子を球状以外のものにも拡張するために、生体粒子の電子密度を異方的なガウシアンの集合体としてモデリングした場合に、X線回折パターンが精度よく再現できることを確認した。さらに、実際の実験データの解析に応用するために、XFEL施設SACLAのMAXIC-S実験を想定した溶液中の100Sリボソームからの回折パターンを、試料の個数・配向を変えて複数シミュレートし、測定条件を見積もった。その条件をもとにSACLAの利用実験を行ない100Sリボソームからにシグナル検出が出来た。現状では、想定外に高いバッググラウンドノイズの影響や入射強度等の問題により、解析できる回折パターンを取得出来ていないが、良質データの取得に向けて実験を継続する予定である。
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Optics Express
巻: 26 ページ: 26734~26734
10.1364/OE.26.026734