研究課題/領域番号 |
16K05528
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中原 恒 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20302078)
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研究分担者 |
江本 賢太郎 東北大学, 理学研究科, 助教 (80707597)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感度カーネル / コーダ波 / 走時変化 / 地震波速度変化 |
研究実績の概要 |
Pacheco and Snieder (2006)による2次元スカラー波1次散乱モデルに基づくコーダ波走時の感度カーネルを新たに3次元に拡張した.Sato (1977)の3次元1次散乱理論によるエンベロープ合成の成果を利用して,解析的な定式化に成功した.このカーネルの適用可能性を検証するため,スパコンを用いて,ランダム媒質中における3次元スカラー波の伝播を差分法に基づき数値計算し,その結果と比較した.その結果,直達波が速度低下域を通過しない観測点では,解析的なカーネルから期待されるコーダ波の走時変化と差分計算による結果とはよく一致した.一方で,直達波が速度低下域を通過する観測点では,解析的なカーネルによる期待値は数値計算より走時変化を過小評価することが分かった.これは2次元の場合とは異なる特徴であり,3次元の場合は直達波の影響がすこし強いのかもしれない.この成果は中原と江本の共著論文として国際学術誌に掲載された. これまでの感度カーネルのモデル化はスカラー波の枠組みにとどまっていた.しかし,実際の地震波はベクトル波であるため,感度カーネルのベクトル化への取り組みを開始した.2次元,3次元のスカラー波の1次散乱モデルを用いて,ただし観測点での波の振動方向のエネルギーを直交2成分に射影するという方法で,ベクトル波への近似的拡張に成功した.この成果を学会で発表した. コーダ波干渉法と地震波干渉法を併用して,桜島の2012-2014年の人工地震探査の記録を解析し,その期間の地震波速度変化を調べた.その結果,春に低下,秋に上昇という年周的な地震波速度変化が見つかり,その変化は火山性地殻変動と調和的であることが分かった.この成果は,廣瀬・西村との共著として,国際学術誌に掲載された. 江本は,マルコフ近似に基づく地震波散乱理論の近年の発展を簡潔にレビューし,国際学術誌に発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の想定通りで概ね順調に進展しており,大きな問題はない.
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ計画は順調に進んでおり,今後も計画通り進めていくつもりである.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究代表者が学務の都合で参加できない学会が多く,旅費の使用額が当初予定よりも少なくなってしまった.またスパコンの使用料を計上していたが,共同研究者の独自予算をうまく利用できたため,本予算を利用せずにすんだ.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はできるだけ都合を調整して,研究代表者と研究分担者ともに関連する学会や研究集会に参加し,積極的に成果をアピールする予定である.スパコンの使用料を次年度以降も共同研究者の独自予算から支出できるかどうかは未定であるので,当初の予定通り計上しておく.
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