研究課題/領域番号 |
16K05531
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
ゲラー ロバート 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (40170154)
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研究分担者 |
河合 研志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20432007)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 波形インバージョン / S波速度構造 |
研究実績の概要 |
局所的な3次元波形インバージョン手法(Kawai et al. 2014)を応用し、十分高い解像度が得られる領域の詳細な3次元構造推定を行った。具体的には、(1)マントル遷移層の3次元S波速度構造推定、(2)マントル最下部の3次元異方性構造推定を達成した。 (1)震央距離10-30度のS波トリプリケー ションデータを用いてマントル遷移層を含む深さ約300-800kmの領域の3次元S波速度構造推定を行った。中米下のマントル遷移層を推定対象として南米の地震、北米の稠密アレイ観測網のデータを用いた。大量のデータ (数十万の地震波形記録)を用いて安定してインバージョンを行うため、特に震源パラメータの再決定、震源・観 測点補正方法、データの重み付け、逆問題の最適化手法の改善を行った。中米下のマントル遷移層の3次元S波速度構造推定結果から過去に沈み込んだ海洋プレートと考えられるS波高速度異常を解像し、この地域の複雑な海洋プレートの沈み込み様式の理解に貢献した。 (2)震央距離70-100度の地震波水平2成分(transverse及びradial成分)のS及びScSを含むデータを用いてマントル最下部400kmの3次元異方性構造(鉛直軸対象の異方性を仮定。推定パラメータは異方性に関わる2つの剛性率L及びN)を推定した。北部太平洋下のマントル最下部を推定対象として日本付近の地震、北米の稠密アレイ観測網のデータを用いた。大量のデータ (数十万の地震波形記録)を用いて安定してインバージョンを行うため、震源・観 測点補正方法、データの重み付け、逆問題の最適化手法の改善を行った。過去に沈み込んだスラブと解釈できる水平流が卓越する領域と、スラブの沈み込みに誘発された上昇流と解釈できる鉛直流が卓越する領域を解像し、マントル最下部の沈み込み様式の制約に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに開発してきた局所的3次元波形インバージョン手法を改善し、特定の領域の全マントルの3次元構造推定を行うための一ステップとして、マントル遷移層付近の3次元S波速度構造推定及びマントル最下部の異方性構造推定を行った。その過程で、今像推定のための不均一なグリッド分割、震源パラメータの再決定、震源・観測点補正方法、データの重み付け、逆問題の正則化等の問題を克服した。マントル最下部・マントル遷移層は十分高い解像度で推定できた一方で、現状では解像度が乏しい領域(下部マントル中部)をどのように波形インバージョンで推定するかが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られた研究成果を詠じ論文としてまとめて学術誌に投稿する。全マントルの3次元構造推定に向けて引き続き手法開発を行う。具体的にはまず、時間窓の設定、データ重み付け手法の決定、逆問題の最適化手法の決定を行ったうえで、解像度の見積もりを行う。十分なデータが確保できる北部太平洋もしくは中米を対象として可能な限り高い解像度で構造推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国政府機関の閉鎖に伴いJGR誌へ投稿した論文の査読過程に当初想定より多くの時間を要しているため、論文掲載料 として計上していた予算の延長を申請する。
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