研究課題
局所的な3次元波形インバージョン手法(Kawai et al. 2014)を応用し、高い解像度が得られる領域の詳細な3次元構造推定を行った。具体的には、(1)マントル遷移層の3次元S波速度構造推定、(2)マントル最下部の3次元異方性構造推定を達成した。(1)震央距離10-30度のS波トリプリケーションデータを用いてマントル遷移層を含む深さ約300-800kmの領域の3次元S波速度構造推定を行った。中米下のマントル遷移層を推定対象として南米の地震、北米の稠密アレイ観測網のデータを用いた。大量のデータ (数十万の地震波形記録)を用いて安定してインバージョンを行うため、特に震源パラメータの再決定、震源・観測点補正方法、データの重み付け、逆問題の最適化手法の改善を行った。中米下のマントル遷移層の3次元S波速度構造推定結果から過去に沈み込んだ海洋プレートと考えられるS波高速度異常を解像し、この地域の複雑な海洋プレートの沈み込み様式の理解に貢献した。 この成果は査読付き国際論文誌に採択され掲載されている。 (2)震央距離70-100度の地震波水平2成分のS及びScSを含むデータを用いてマントル最下部400kmの3次元異方性構造(鉛直軸対象の異方性を仮定。推定パラメータはS波異方性に関係する2つの弾性定数L及びN)を推定した。北部太平洋下のマントル最下部を推定対象として日本付近の地震、北米の稠密アレイ観測網のデータを用いた。大量のデータ(数十万の地震波形記録)を用いて安定してインバージョンを行うため、震源・観測点補正方法、データの重み付け、逆問題の最適化手法の改善を行った。過去に沈み込んだスラブと解釈できる水平流が卓越する領域と、誘発された上昇流と解釈できる鉛直流が卓越する領域を解像し、マントル最下部の沈み込み様式の制約に貢献した。この成果は査読付き国際論文誌に投稿準備中である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 124 ページ: 9664~9681
10.1029/2018JB016924