研究課題/領域番号 |
16K05532
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
亀 伸樹 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90304724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 境界席分方程式法 / 断層 / 地震 / 亀裂 / 動的破壊 / 界面 / 亀裂 |
研究実績の概要 |
【媒質不均質を取り扱う地震破壊理論研究】地震破壊の理論的研究は、解析の数学的困難さから、その枠組みが均質媒質中に限られてきた。媒質不均質を取り扱う地震破壊理論研究を立ち上げ、その実行のための数値計算手法の開発を拡張境界積分方程式法の定式化を用いて行う。
【2D-XBIEM数値計算コードの実装および媒質効果のデモ】本研究で導かれた 2次元問題におけるXBIEM核関数(単位トラクション入力に対する媒質内部の変位及び応力の応答関数)を用いて、媒質境界破壊の取り扱いに必要となる陰的時刻更新スキームを考案し、数値計算コードの実装を行った。直接対応する解析的ベンチマークは存在しないため、解析的ではあるが運動学的な界面破壊の既往研究の解を用いて陰的スキームの検証を行った。両者は良い一致を示し計算コードの有効性が確認できた。こうして作成した数値計算コードを用いて、二層媒質において面外直線形上亀裂が界面と交差する動的破壊問題を解析した。媒質コントラストの比、および界面に対する垂直圧縮応力、水平圧縮応力の比の二つをパラメタに取り、両者を系統的に変化させて媒質効果を抽出する。界面において動的破壊が進展する/停止する二つの現象に分岐し、分岐線はパラメタ平面上においてほぼ直線で表現された。この解釈のために、弾性波動論における媒質境界における平面波の反射と屈折から期待される亀裂先端のクーロン応力の増分の理論式を導出した。分岐線をフィットさせた所、理論式において応力増分が一定値の場合とほぼ一致することが示された。このことはすなわち、界面破壊の進展と停止を支配するのは、界面において動的に生成される応力場の効果であることを定量的に示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果が Kusakabe and Kame, Derivation of 2-D XBIEM kernels and their application to a rupture crossing a bimaterial interface, Geophys. J. Int. (2017) 210, doi: 10.1093/gji/ggx240として出版された。拡張積分方程式法のアイデアが、具体的な各関数の導出、および、陰的時刻更新スキームと共に実装された2次元の計算コードが完成した。幾何学的に単純な場合においてではあるが、動的破壊における媒質不均質の効果の抽出ができたことは、研究が順調に進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進は二つの方向性が考え得る。一つは、3次元問題への展開である。この場合、幾何学的に複雑な断層破壊の表現に必要となる三角要素上の単位トラクション入力に対する応力各関数を導く。もう一つは、2次元問題において媒質境界を含む現実的な構造不均質に対してシミュレーションを行い、地震発生における構造不均質の効果を抽出する。
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備考 |
【受賞】木村将也(修士課程2年)修士論文「地震の即時重力変化検出の研究」2017年度東京大学理学系研究科奨励賞、2018年3月22日
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