研究実績の概要 |
本年度は、東北地方太平洋沖地震震源域での震源パラメータ解析と地球内部構造モデル改良の研究を以下の手順で進めた。[1] 陸海統合3次元構造モデルの初期モデルを、近年コミュニティで標準的に使われているJ-SHIS深部地盤データV2(藤原・他 2015)および全国一次地下構造モデル(暫定版)(地震調査研究推進本部 2012; Koketsu et al. 2008, 2012)に基づいてアップデートした。なお地形モデル(岸本 2000)も利用した。[2] アップデートした陸海統合3次元構造モデルのもとで、我々が開発したHOT-FDM (Nakamura et al. 2009)を用いてあらためて計算地震波波形を生成した。計算には東工大TSUBAME-3.0とHOT-FDMのマルチGPU対応版(Okamoto et al. 2010; Okamoto et al. 2013)を利用して、56基のGPUを用いた62回の大規模シミュレーションにより波形生成を行った。[3] 新たに生成した計算波形を用いて震源域の11個の地震について震源パラメータを再決定した。再決定には我々が提案したFAMT解析法(Okamoto et al. 2017, 2018)を用いた。観測データとしてはKiK-netの強震動波形データとF-netの広帯域波形データを利用した。[4] 構造パラメータを改良するための周波数領域の感度カーネルをアジョイントの方法(Tanimoto GJI 1990 の方法を本研究で粘弾性モデルに拡張したもの)によって計算した。感度カーネルは2つの弾性率、密度、Qp、Qsの5つのパラメータについて求めた。そしてアウターライズの地震を対象にすると、10秒程度の周期帯においても剛性率カーネルの空間パターンには非対称性があり、単純な構造モデルでは不十分であることなどの考察を行った。
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