研究実績の概要 |
全球大気再解析データの国際比較プロジェクトStratosphere-troposphere Processes And their Role in Climate (SPARC) Reanalysis Intercomparison Project(S-RIP)をひきつづき主導し、比較検証を進めた。2019年11月に報告書の全12章の原稿が出そろい、SPARC Officeの主導で査読過程が開始された。この報告書は2020年9月に出版予定である。 火山噴火の地表気温への影響の解析研究の論文が、査読過程を経て、2020年1月にAtmospheric Chemistry and Physics誌から出版された(Fujiwara et al., 2020)。 さらに、火山噴火の成層圏・対流圏の大気循環場への影響の解析を進めた。解析には、2018年に東京大学のMartineau博士と中国・精華大学のWright博士とともに作成した東西平均データセット(Martineau et al., 2018)を使用した。気温、東西風、残差子午面循環、波活動フラックス収束など、複数の鍵となる変数について、線形トレンド、準二年振動、太陽11年周期活動、エルニーニョ南方振動に対応する応答を調べると同時に、アグン山、エル・チチョン山、ピナツボ山の噴火に伴う変化を詳しく調べた。 いずれの噴火事例においても、熱帯下部成層圏で昇温し、赤道の昇温域上端で西風偏差が生じていたことは大まかには共通であり、気温と東西風の応答はほぼ厳密に温度風の関係を満たしていることが分かった。いっぽう、残差子午面循環の応答は、噴火事例ごとに異なっていることが判明した。たとえば、噴火後1年間平均の応答をみると、アグン山とピナツボ山については北半球側セルの弱化がみられたのに対し、エル・チチョン山ではその強化がみられた。
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