研究課題/領域番号 |
16K05549
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 知裕 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (60400008)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海洋物理 / 海洋科学 / 自然現象観測 / 乱流混合 |
研究実績の概要 |
海洋中の熱や溶存物質はすべて、海水混合から海洋循環を介して海全体に輸送される。この海洋学における最も基本となる混合を引き起こす、海洋内部の3次元微細構造(水平スケール<O(1km))は、これまで観測方法がなく実態が不明であった。本研究は、研究代表者が考案・構築した「3次元微細流動構造 観測システム」を用いて「内部波の大規模砕波」や「サブメソスケール渦」から乱流に至る遷移過程の3次元構造を観測し、混合を引き起こす微細構造の実態解明を目指す。 本年度は、東北区水産研究所・若鷹丸の調査航海に乗船させて戴き、当初計画通り東北・北海道沖において渦やフロントに伴う微細流動構造の観測を行い、それに加えて津軽海峡太平洋側において内部波の生成と砕波およびそれに伴う微細流動構造の観測を行った。とりわけ後者では海峡の凸部における内部波の生成と砕波(密度逆転)の空間構造と時間発展を投棄式水温計による観測で捉えると同時に、波と砕波の観測された時と場所において激しい流速擾乱と音響反射強度の顕著な空間分布が生じていることを3次元微細流動構造 観測システムにより捉えることができた。このことは内部波とそれに伴う微細な流速擾乱に伴って懸濁物質が輸送・撹拌されていることを示唆している。これら微細構造の力学とそれによる輸送・撹拌の解明を目指し、得られた観測データを流速構造および濁度に注目して解析すると共に次年度の観測の準備を行った。加えて、内部波や渦から乱流に至る過程の力学や潮汐起源の内部波による鉛直混合が海洋の物質循環に与える影響についての研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた渦・フロント域での観測を行った上に、内部波の生成と砕波についても観測を実施できた。また、得られた観測データの解析および次年度の観測の準備も進めていることから、(2)おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、(1)平成29年度に北海道大学水産学部・おしょろ丸の60日航海を利用させて戴き、アリューシャン列島域で内部波の砕波とそこから乱流への遷移過程を観測し、(2)平成30年度に北海道区水産研究所・北光丸または東北区水産研究所・若鷹丸の協力を仰ぎ、津軽海峡または混合水域で観測を行う予定であった。しかし、平成29年度の白鳳丸ルソン海峡観測航海への参加と観測の実施が急遽可能になった。ルソン海峡は大振幅の内部波が生成され砕波していることが知られており、本研究にとって非常に望ましい観測場所である。そこで、この機を活かして観測を実施するため、平成29年度にルソン海峡観測を追加し、代わりに平成30年度の観測を減らすよう変更する。平成29年度の観測追加に伴い、その費用を前倒し支払い請求するが、同観測および平成28年度、29年度の他の観測で得られたデータの解析を平成30年度も引き続き行うことが必要である。平成30年度に請求する金額は減るものの、それに応じて平成30年度の観測を減らしても、研究期間中の観測の合計回数は減少しないので、研究遂行する上では大きな問題はなく研究目的を達成できる見込みである。また、得られた観測データについて濁度および混合強度に注目して解析を行い、成果を国内外の学会、査読付国際誌、およびウェブサイトまたは低温科学研究所の一般公開などを利用して紹介する。
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次年度使用額が生じた理由 |
上の「今後の研究の推進方策」に記載したように、平成29年度に白鳳丸ルソン海峡観測航海での観測を追加して実施することとした。そこで、この観測費用の一部を賄うため、平成28年度に交付された助成金の一部を次年度に繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
主に、平成29年度の白鳳丸ルソン海峡観測航海での観測実施に必要な観測機材の送料に活用する予定である。
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