研究課題/領域番号 |
16K05553
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
岩坂 直人 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60211760)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FORA-WNP30 / 衛星観測プロダクト / 渦活動 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究計画としては (1)海洋再解析データの品質の検証、(2)黒潮続流流路特定、(3)黒潮続流南方海域冬季混合層深度変動の解析の3項目を掲げた。 (1)については、主に海面水温、海面高度との比較からFORA-WNP30の特性の検証を試みた。海面水温分布とその勾配、海面高度分布と勾配をそれぞれの衛星観測プロダクトと比較すると、衛星観測プロダクトの時間分解能に合わせて処理をした場合、定性的に合っていることは確認できたが、年平均等の統計値で比較すると、特に続流域で違いが認められた。その原因の調査を現在行っているが、高い時空間分解能を持つFORA-WNP30が活発な渦活動を再現したため、時空間分解能がやや劣る衛星プロダクト側がそれらを再現し切れていない可能性があると推測している。(2)については、続流流路を海面高度等高線、流速ベクトル、海面水温前線を用いて定義する方法については検討し、これらによる「流路」は互いに概ね良い対応があることを確認した。ただし既存流軸資料との対応については(1)で明らかになった点を踏まえ、比較方法について検討中である。(3)については混合層深度決定などの初歩的解析は行ったものの、踏み込んだ解析には至っていない。 平成28年度研究計画(1)については、FORA-WNP30をどのように利用すると現実の海洋で起こっている現象を理解できるか、と言う根幹の問題であるので、1年間掛けてじっくり取り組むべきところだったと反省している。(2)、(3)は格子化されたデータを用いるため技術的には容易であり、平成29年度以降順調に進められると予想している。 平成29年度は平成28年度計画(1)についてさらに検討し、FORA-WNP30で再現されている現象の理解と現実への適用法を確立したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のように、FORA-WNP30が示す続流域の状態を衛星観測プロダクトと年平均等の統計値で比較したときに、特に続流域で違いが認められ、その原因の調査を現在行っているために、本格的な解析に進めていないことが主な理由である。また当初、データサーバーと解析用PC間のネットワーク回線の不具合などもあり、作業が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
FORA-WNP30の特性について今年度改めて十分調査し、現実の海洋変動への適用方法を検討する。当初は主に海面水温、海面高度の衛星観測プロダクトとの対応について検討していたが、平均場についてはWorld Ocean AtlasやArgo観測に基づくMOAA-GPV等の内部資料との比較も行う。また、既存資料の知見に合わせたFORA-WNP30の解析という当初方針に加え、FORA-WNP30にみられる海洋変動特性に合わせた既存資料の解析も行うことで、FORA-WNP30を用いた現実海洋理解への道筋をつけたい。 また海洋表層の主要な強制力の一つである風の場についての解析を始める。特に風速のみならず渦度鉛直成分の長期変動特性を明らかにしたい。これにより、申請段階での平成29年度以降の計画(4)黒潮続流南方海域混合層変動へ大気場のローカルな作用と遠隔作用の解析のうち、Qiu and Chen(2006)が提唱した、北太平洋中央部の風応力場の変動がもたらす海洋上層の擾乱の西方伝播が続流流路変動をもたらすという仮説を前提として北太平洋中央部の風応力場の変動を調べ、仮説検証の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画時は大型のデータサーバーを計画していたが、実際には安価なディスクをデータサーバとして用いることが出来たこと、同様に解析用ワークステーションではなく複数のPCを並列的に動かすことで処理を速めるような方法をとったことで、物品費が押さえられたのがおもな理由と考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
ハードディスクは消耗品であり頻繁な利用による故障を避けることは出来ない。装置故障による研究阻害を避けるため、昨年度購入したデータサーバ用のディスクにバックアップ用のディスク装置をつけてデータサーバの不具合に対処することが望ましく、この費用に充てたいと考えている。
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