研究課題/領域番号 |
16K05553
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
岩坂 直人 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60211760)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FORA_WNP30 / 黒潮続流 / 海洋混合層 / 塩分バイアス / 海洋上層成層度 / 海面熱フラックス / 風応力 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続きIwamaru et al.(2010)(以下IKI2010)の追試を行うとともに、塩分値などの検証を行った。既存のArgo観測値などを使った検証で、黒潮続流域で認められた顕著な塩分バイアスについては、FORA_WNP30作成者との情報交換を行いながら検討したがバイアスの要因についてははっきりせずさらに検討することになった。IKI2010の検証では、IKI2010が水温場での研究だったのに対して本研究では密度場での研究のため、混合層深度年々変動の細部では違いが見られたものの、全体としてはIKI2010の結果が再現された。海面熱収支、鉛直成層度との関係はIKI2010と整合し、冬季混合層深度に対する海面熱フラックスの寄与は1995年冬頃までは顕著、その後は相対的に寄与が小さくなること、前年12月の海洋上層成層度は1995年頃から寄与が大きくなることがわかった。しかしIKI2010で指摘されていた前年夏季の海洋上層成層度の寄与は、本研究では少ないことがわかった。また全体として1995年以降decadal変動が顕著であった。これらの研究結果は、日本海洋学会2018年度秋季大会、2018年度大気海洋相互作用研究会で発表し関係者と議論した。但し、海面高度計データが同化される前後でモデルでの渦活動の顕著な違いは人工的なものであることは明らかなものの、定量的にどのように混合層変動に反映しているか評価する方法を検討中のため、学術論文としては投稿していない。 北太平洋風応力場の変動との関係についても解析を試みたが、黒潮続流南方海域の混合層変動との明確な関係は見いだせていない。 また、本研究の過程で海面水温および海洋混合層変動への温帯低気圧活動の寄与について新しい成果を得られたので論文として投稿し受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IKI2010の再現、混合層変動の要因が1990年代半ばを境に海面冷却から成層度に変わったことの確認、続流変動と成層度との関係を調べ両者に明確な関係は見いだせなかったこと、風応力場との関係を調べたことなど、当初掲げた目標は概ね実現したという点で順調に終えることができたと考えている。但し、当初期待した結果が得られていない項目があること、同化モデルでも観測手段の大幅な変革に伴う人工的なシグナルを抑え切れていないことなどから、論文として成果を世に問うところまでは至っていない。 なお、研究の過程で得られた低気圧活動と海面水温、海洋混合層変動との関係に関する研究成果を論文(Kobashi, Doi, and Iwasaka, 2019:J.Geophys. Res.,Oceans 10.1029/2018JC014632)として発表できたことはよかった点である。
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今後の研究の推進方策 |
北太平洋風応力場の変動と黒潮続流およびその南方海域の混合層変動との関係については、これまでの解析から東経160度付近を境に対応関係が変わっているのではないかと思われる結果を得ており、これを中心にさらに研究を進めていく。 また、海洋同化モデルによる再解析は、今後の海洋研究に取って極めて重要なツールとなることを示すことができたと考えており、現在使っているFORA_WNP30の品質評価をさらに進めることにより、海洋同化モデル及び再解析の技術の発展に貢献したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の過程で得られた低気圧活動と海面水温、海洋混合層変動との関係に関する研究成果を論文にまとめ、2018年10月3日にアメリカ地球物理学連合の学術雑誌(Journal of Geophysical Research-Oceans)に投稿した。受理される見込みであったものの年度内に受理され投稿料の支払いが済ませられない可能性があったため、2月15日付けで予算の一部を次年度に繰り越すための補助事業期間延長承認申請書を提出し認められた。じっさいのところ、論文は2019年3月13日付けで受理されたものの論文掲載料の請求が年度内に間に合わなかったため、次年度早々に執行することにした。
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