最終年度は前年度末にアメリカ地球物理学連合の学術誌JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH-OCEANSに受理された論文の投稿料の支払いを行った。 研究期間全体の成果は以下の通りである。 (1)FORA-WNP30の品質の検証:海面水温データセットOISST、NGSST-O、海洋内部水温塩分データセットWorld Ocean Atlas 2013、MOAA-GPVなどと比較検証を行った。その結果上層水温場については北緯35度~40度の緯度帯でどの層でも若干高め(0.5K)のバイアスが見られ、塩分については、表層で低塩分、亜表層では高塩分の傾向が認められ、黒潮続流上流域では水温16℃~20℃の水温帯において塩分バイアス(0.1)が認められた。 (2)黒潮続流流路特定:続流流路を海面高度等高線、流速ベクトル、海面水温前線を用いて定義する方法については検討し、これらによる「流路」は互いに概ね良い対応があることを確認した。 (3)黒潮続流南方海域冬季混合層深度変動の解析:Iwamaru et al.(2010)(以下IKI2010)の追試を行った。IKI2010が水温場での研究だったのに対して本研究では密度場での研究のため、混合層深度年々変動の細部では違いが見られたものの、全体としてはIKI2010の結果が再現された。海面熱収支、鉛直成層度との関係はIKI2010と整合し、冬季混合層深度に対する海面熱フラックスの寄与は1995年冬頃までは顕著、その後は相対的に寄与が小さくなること、前年12月の海洋上層成層度は1995年頃から寄与が大きくなることがわかった。しかしIKI2010で指摘されていた前年夏季の海洋上層成層度の寄与は、本研究では少ないことがわかった。また全体として1995年以降decadal変動が顕著であった。
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