台風強度は統計力学モデルや簡易力学モデル、精緻な数値予報モデルによる予報を単体で用いるよりも、それらを組み合わせると最も予報精度が良いことが知られている。本研究では、環境場の外的要因と台風の内部力学(内的要因)の役割に着目して、各モデルがどのような事例に対して台風強度変化を捉えられるのかを明らかにする。 昨年度までに、台風強度予報における複数のモデルそれぞれの強みと弱みについてまとめた。共通する課題は、どのモデルも急激な強度変化をする事例は強度予報誤差が大きいことである。それぞれのモデルの特徴は、SHIPSは平均的な台風強度予報誤差が最も小さい、CHIPSは強度予報誤差が大きいが急激な発達を表現するポテンシャルを持つ、数値予報モデルは地形などの影響や非軸対称構造を表現することで上陸時や再発達する台風の強度の時間変化傾向をよく捉えることが分かった。 数値予報モデルの強度予報を改善するため、大気追跡風をデータ同化することによる台風予報への影響について調べた。データ同化に用いる背景誤差共分散を高解像度化することで、台風の発達が遅れるバイアスを軽減することができた。しかし、強い台風に対して、データ同化手法の設定を変えても台風の発達が遅れるバイアスは残ったままであった。これは初期値の改善だけではなく、数値予報モデルの解像度や物理過程の改良も必要であることを示唆する。本結果は、原著論文として出版された。 本年度は、数値予報モデルによる強度予報改善の発展として、昨年度より高密度な大気追跡風の同化による影響を調べた。高密度大気追跡風を同化することで台風の発達に関わる台風の内部構造が変わるが、台風強度予報誤差にはあまり影響がないことが示された。追加調査によると、高密度大気追跡風を適度に間引きして利用することで、台風強度予報を改善し得ることが分かった。
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