研究課題/領域番号 |
16K05557
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
橋本 明弘 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (20462525)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 気象学 / 雲物理学 / 数値モデル / 氷晶 |
研究実績の概要 |
1994~2002年の冬季越後山脈上空で実施された雲粒子の直接観測によって得られたデータをもとに、温度条件に応じて、柱状結晶・板状結晶・凝集体等、様々な氷粒子がどのように出現するかを統計的に調べた。多次元ビン法微物理モデルを組み込んだ非静力学モデルを用いて、2次元ベル状山岳上空に発生する降雪雲に関する数値実験を実施し多結果、実際の氷粒子の多様性を概ね再現し得ることが分かった。さらに、多次元ビン法雲微物理モデルを用いた空気塊断熱上昇実験を様々な大気条件のもとで実施し、氷粒子の縦横比や密度等に関するリファレンスデータの構築を進めた。高精度バルク法雲微物理モデルのための新しい粒子クラス分類方法と、それを適用した場合の粒子の振る舞いを、一部のリファレンスデータを利用して再現し、妥当性を検討した。これらの点について、雪氷研究大会,気象学会秋季大会,非静力学モデルに関する国際ワークショップで研究発表を行った。
温度・湿度に応じて特徴的な晶癖が生じる結晶成長モードの定式化等について、先行研究を参考に検討を進めるとともに、高精度バルク法雲微物理モデルのコーディングを一部開始し、氷粒子の物理特性を表すための予報変数を必要に応じて増設できるようにした。また、各粒子クラスの生成量に対して、昇華過程や雲粒捕捉過程等、各素過程がどの程度寄与しているかを新たな変数として組み込むことで、氷粒子の物理特性に関する表現力を飛躍的に向上させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雲粒子の直接観測データを利用した解析を進めるとともに、多次元ビン法雲微物理モデルを用いた数値実験により、環境条件別の氷粒子特性についての知見が得られた。氷粒子の縦横比や密度等に関するリファレンスデータの構築の他、素過程の定式化の検討も進めている。それらをもとに、高精度バルク法雲微物理モデルのデザインと一部コーディングを行っており、氷粒子の多様な物理特性に関する表現力を飛躍的に向上させられることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
直接観測データの解析結果と、数値モデルから作成したリファレンスデータをもとに、高精度バルク法雲微物理モデルの各素過程の定式化とコーディングを進めるとともに、順次、非静力学モデルへ導入し、動作確認を並行して行う。冬季山岳性降雪雲の再現実験を行い、過去の直接観測データを利用して検証と改良を進める。得られた結果を国内外の学会・研究会で発表するとともに論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ保存装置導入のための費用が想定よりも安価に済んだため。当装置を翌年以降も維持するために保守費用としての必要な分を繰り越しているため。成果発表のための出張旅費が想定よりも安価に済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に導入したデータ保存装置の保守費用等に使用する。 成果発表のための出張旅費に使用する。
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