東境界のゆっくりとした変動(季節変動・年変動など)は沿岸の海底地形が変動を捕捉する傾向に対して、惑星ロスビー波が変動を岸から剥がし沖へ伝播させてしまう傾向もあり、どのような条件で捕捉されるのかはっきりとはわかっていない。惑星ベータがあるときの沿岸捕捉波の力学理論も未完成である。さらに、本研究で取り上げた豪州の西側では、南インド洋の東向き表層流が豪州沿岸に達しており、また、下層では逆向きの西向き流の存在が示唆されるが、そのような沖合と沿岸の相互作用の力学も十分には理解されていない。本研究では、観測に基づく格子データから豪州西海岸を南北に流れるルーイン海流・ルーイン潜流と沖合の流れの接続の三次元構造を明らかにした。さらに高解像度数値海洋モデルの結果を解析し、密度変化まで含めた三次元構造を示した。また、同じ数値モデルの結果の中に、豪州北西海岸の大陸斜面に沿って流れる季節的な潜流を発見し、その三次元構造を記述した。さらに、その構造や時間変動は沿岸捕捉波の伝播で説明できるのではないかという理論モデルも提出したが、惑星ベータを無視した理論であり、モデルの中の流れの構造のすべてを説明するものでもない。さらに、北西海岸から西海岸への波動の伝播が理論的に予想されるのに対して、モデルの中では不連続がみつかった。このように、新しい流れの発見から新しい問題提起をする論文となった。最終年度は、豪州の西海岸から南海岸、更に東海岸に伝播する、年周期の深い(~1000m)変動を発見した共同研究に参加した。ここでも、海底地形による捕捉とロスビー波による西向き伝播が両方みられ、理論的解釈が完全とは言い難く、今後研究を進めるべき方向を示唆するものとなった。
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