研究課題
地球の極域電離圏(高度100km)では、数時間に一度、真夜中付近でオーロラが爆発的に増光する。このオーロラ爆発は、より遠方(高度5-20万km)の磁気圏尾部に流れる電流が、磁力線再結合により、電離圏にショートする現象であると想像される。このショート電流(オーロラ電流系)と、磁力線再結合との関係を、衛星および地上観測を用いて解明することが、本研究の目的である。本年度は、オーロラ爆発の階段状発達を明らかにし、研究成果をJournal of Geophysical Research誌において発表した。オーロラの極方向への拡大が階段状に起こる現象について事例解析を行った。その結果、磁気リコネクションの位置が、尾部側に階段状にジャンプしていることを見いだした。本研究では、THEMIS編隊衛星の磁気圏尾部観測と、北米・グリーンランドの地上オーロラ全天観測を用いた。全天カメラでのサブストーム開始時に、尾部側24地球半径(Re)のTHEMIS-1衛星は、プラズマ流が尾部向きから太陽向きへ10分程度のタイムスケールで反転することを観測した。この反転シークエンスは、しばしば、一つの磁気リコネクション領域が、尾部側に後退していることを、衛星が観測したと解釈される。しかし、この反転よりも1分後に、THEMIS-1よりも5 Re地球側に滞在していたTHEMIS-2衛星は、地球向き高速流を観測した。従って、この反転シークエンスは、一つのリコネクション領域の後退ではなく、新たなリコネクション領域が遠方で生じたことを意味すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画において重要な、オーロラデータ解析ソフトウェアを開発した。特にオーロラデータを地理座標から地磁気座標に変換することができたことにより、オーロラ爆発に関する研究成果を、論文として出版した。一方、スワム衛星のデータ解析ソフトウェア作成は、電場データの補正に問題があるため、対応中である。
今後も、概ね当初予定通りに研究を推進する。ただし、2017年6月から9月に、米国のMMS衛星、日本の「あらせ」衛星が、地球夜側磁気圏を観測することが、ほぼ確実となったために、これらの衛星観測結果によって、研究対象とするオーロラ爆発イベントを再構成する。
当初年度計画では、記憶装置(980千円)を購入し、次年度にデスクトップコンピュータ(540千円)を購入する予定であった。実際には、他人が廃棄予定の旧式の記憶装置を1-2年程度活用できることになったので、購入順序を入れ替え、記憶装置は次年度に購入することにしたため、差額が発生した。
差額は次年度において、記憶装置の購入に使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Geophysical Research Space Physics
巻: 121 ページ: 4548-4568
10.1002/2015JA022244