研究課題
地球の極域電離圏(高度100km)では、数時間に一度、真夜中付近でオーロラが爆発的に増光する。このオーロラ爆発は、より遠方(高度5-20万km)の磁気圏尾部に流れる電流が、磁力線再結合により、電離圏にショートする現象であると想像される。このショート電流(オーロラ電流系)と、磁力線再結合との関係を、衛星および地上観測を用いて解明することが、本研究の目的である。本年度は、オーロラ爆発の衛星画像と全天画像による同時観測を解析し、研究成果はEarth, Planets and Space誌に受理された。全天画像でのオーロラサブストームの開始(オンセット)は、経度方向に長い「initial brightening」と、その数分後に始まる、極側に拡大する「オーロラ爆発」との二つのステージを持つと考えられている。一方、衛星オーロラ全球画像では、オーロラサブストームの開始におけるこの二つのステージは観測されていない。これまで、衛星観測の時間分解能が悪いために、この相違は特に議論されてこなかった。本研究では、Polar衛星がフィルタを固定した高時間分解観測(37秒毎)を行っていた期間を調べた。その結果、オーロラ爆発は衛星画像と全天画像で同時に観測されていたが、その3分前に開始したinitial brighteningは全天画像でのみ観測されていた。本研究では高時間分解の衛星画像を用いたため、衛星画像でinitial brighteningが観測されなかった原因は空間分解能にあると考えられる。本研究の結果、衛星画像と地上画像で観測したオーロラ爆発を統一的に理解できるようになった。
2: おおむね順調に進展している
オーロラ爆発は、地上観測と衛星観測では取得されたデータが一見矛盾している様に見える。地上観測と衛星観測の違いを考察しオーロラ爆発の定義を議論した研究成果が、論文として受理された。一方、2017年夏期の北米オーロラデータがまだ本格的に公開されていないこともあり、MMS衛星のデータ解析は、本格的には開始しなかった。
今後も、概ね当初予定通りに研究を推進する。2017年6月から9月に、米国のMMS衛星、日本の「あらせ」衛星が、地球夜側磁気圏を観測したために、これらの衛星観測を用い、研究対象とするオーロラ爆発イベントを再構成する。また、2018年夏期には、MMS衛星の運用に加わることにより、オーロラ爆発イベントの高時間分解データを確保する。
当初年度計画では、記憶装置(レイド、3TBx16=48TB)を購入する予定であったが、前年度に他人が廃棄した旧式の記憶装置(30TB)がしばらく動作可能となったために、購入を見送った。本計画当初では3TBのハードディスクを念頭に置いていたが、最近8-12TBが主流になり、単体のハードディスクの容量が大きくなってきたために、当初計画を変更し、レイドを購入する代わりに、12TBの単体のハードディスクを複数、デスクトップコンピュータに組みこむ予定である。次年度使用額はこのハードディスクの購入に使用する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Earth, Planets and Space
巻: 70 ページ: 1,18
10.1186/s40623-018-0843-3