研究課題
2016年7月に木星に到達したNASAの木星極軌道探査機JUNOと、アメリカにある世界最高レベルの感度を持つ低周波電波望遠鏡LWAを使った木星電波観測により、木星電波の放射機構を解明する上で重要となる電波放射源の位置やそれに関連する電波放射ビーム特性を調べ、3次元的な木星電波放射ビーム構造を明らかにすることを目的としている。LWAの観測データについては、木星電波のダイナミックスペクトラム上に見られる斜めの縞状構造のモジュレーションレーンに着目し、偏波特性を考慮したモジュレーションレーンの傾きの解析を行った。このモジュレーションレーンの測定によって、木星電波源の位置が推定でき、従来から同定されている木星電波源の衛星イオの位置に関連するIo-CとIo-Bについて、起源の異なる電波源の領域があることがわかった。それらを新たにIo-C'とIo-B'を呼ぶことにし、その電波源の領域が、衛星イオを貫く磁力線の根元で最もオーロラ発光強度が高い経度と一致するという重要な情報が得られた。特にIo-Cの領域においては、木星の北磁極側と南磁極側の両側から同時に電波が放射されていることがわかり、複雑な木星電波放射源の様相を明らかにすることができた。また、JUNOで観測された木星電波観測データの解析から、従来の木星電波放射が木星の磁力線に対して角度を持ち磁力線に軸対称に放射されているとするコニカルシート状のビーム構造を支持する結果が出始めている。つまり、JUNOから見た木星電波の緯度方向のビーム構造は、コーン状の一部を見ていることを示しており、電波放射機構を解明する上で、非常に重要な情報を得ることができたことになる。今後、さらに多くのJUNOで観測された木星電波のデータ解析を行うことにより、コニカルシート状のビーム構造が一般的であるかの統計解析も行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
木星探査機JUNOは、53日で木星を周回する極軌道に入っており、順調に木星電波のデータが収集されている。当初の予定であった14日の周回軌道に入れない不具合があったものの、木星電波観測には支障がなく、さらにミッション期間が伸びたことが本研究では有利になってくると考えている。また、LWAの観測も順調に行われており、当初の目的であるJUNOとLWAの木星電波データを組み合わせた木星電波源のより詳細な情報を得ることができる予定である。
今後は、さらに多くのJUNOの観測データとLWA観測データの解析を進める。特に、LWA観測データのダイナミックスペクトラム上に見られる斜めの縞状構造のモジュレーションレーンについては、偏波情報も考慮に入れてその縞状構造の傾きを測定し、様々な木星磁場モデルをベースにコンピュータシミュレーションを行うことにより電波源の存在する磁力線の位置を特定する。また、JUNOで測定された詳細な木星磁場構造の新しい情報も含めて、電波源の位置関係と、3次元的なビーム構造との詳細な関係を明らかにしていく。
研究を進める上で解析するデータが増えてきており、それに対応する処理システムが必要となるが、既設のデータ処理システムで対応できる状況であったため次年度使用額が生じた。翌年度は、データ量がさらに大きくなると考えられるので、それに対応する処理システムとして次年度使用額を利用する計画となっている。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Planetary Radio Emissions VIII, edited by G. Fischer, G. Mann, M. Panchenko, and P. Zarka, Austrian Academy of Sciences Press, Vienna
巻: none ページ: 89-101
10.1553/PRE8s89