研究課題/領域番号 |
16K05573
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 慎 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (10201930)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 礫質タービダイト / ベッドフォーム / 海底谷 / 海底チャネル / バックセット層理 / 堆積相 |
研究実績の概要 |
2017年度は,礫質海底谷埋積物ならびに礫質海底チャネル埋積物を対象とした野外調査を行った。国内では,更新統上総層群黒滝層,東日笠層,長浜層,南房総の鮮新統千倉層群最下部白浜層,ならびに茨城県上部白亜系那珂湊層群磯合層を主な検討対象とした。さらに,カリフォルニア州モントレー市周辺の古第三系カルメロ層ならびにマーレ層の礫質ならびに砂礫質海底谷埋積物の野外調査を行った。今年度の野外調査で,海底谷ならびに海底チャネルを埋積した礫岩ならびに礫質砂岩の集合体は,(1)基底部にはフルート構造を一部でともなう明瞭な侵食構造を示すこと,(2)上部は上に凸のレンズ状形態を特徴とすること,(3)礫質砂岩には下位の礫岩が示す上に凸の堆積形態と調和したウェーブ状層理が広く発達すること,(4)ウェーブ状層理を示す礫質砂岩の上位には塊状層理あるいは級化層理を示す砂岩が発達すること,(5)礫岩に注目すると,上流部に逆級化層理,中央部に塊状層理あるいは平行層理,下流部に下流方向へ緩く傾いた斜交層理の発達が認められること,(6)古流向に直交あるいは斜交する露頭断面では,斜交層理はトラフ型の形態を示すこと,(7)礫岩最上部には級化層理が発達し,特に下流側で広く認められることなどの特徴が明らかとなった。さらに,上記の特徴を示す礫岩ならびに礫質砂岩の集合体にともない,(8)明瞭な侵食面を基底に持つバックセット層理を示す礫岩の発達が一部で認められる。したがって,礫岩ならびに礫質砂岩の集合体が下流進行型の3次元デューンとして形成された可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度の野外調査をとおして,海底谷や海底チャネルを埋積した礫質ならびに砂礫質の堆積物の形成に,礫や礫質砂など粗粒砕屑粒子で構成されたベッドフォームの移動と累重が大きく関わっていたことが明らかとなってきた。さらに,このような粗粒ベッドフォームは3次元デューンの特徴を示すこと,ならびに跳水にともなって形成されるバックセット層理を一部でともなうことから,ベッドフォームの形成には射流状態の重力流が重要な役割を担っていたことが理解される。また,粗粒ベッドフォ-ムの形成にともない一部でフルート構造が形成されていることから,重力流は乱れの大きい流体であったことが理解される。粗粒ベッドフォームを構成する堆積構造の特徴に注目すると,異なった種類の堆積構造は従来の粗粒タービダイトモデルで識別された構成堆積相にそれぞれ比較することができる。したがって,粗粒タービダイトモデルの構成堆積相は,重力流の下流方向への減衰過程,あるいは変換にともなって形成されると解釈されてきた従来のモデルに対して,構成堆積相は粗粒ベッドフォームの構成堆積物という異なった視点からのモデル化が可能であることが明らかとなってきた。一方,当初予定された野外調査の検討対象の一部については,2017年度内で十分成果をあげることが出来なかった。このような不足分の野外データを次年度に追加することにより,今年度までに明らかとなってきた礫質タービダイトモデルの再構築が可能になると考えられる。さらに,堆積物の特徴についての定量化が今年度中に十分行われなかったため,2018年度で,礫質タービダイトに関するγ線強度や帯磁率などに関するデータの取得を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は,前年度までに明らかとなった礫質デューン堆積物の特徴と従来の礫質タービダイトモデルの構成堆積相との対応関係に関する新たに構築されたモデルの適応性を確認し,礫質タービダイトモデルの再構築に向けて,前年度までに得られたモデルを改善するための新たな地域での野外調査,ならびに前年度に十分な成果の得られなかった地域での再調査を行う予定である。特に,従来の礫質タービダイトモデルの構築に重要な役割を担ったカルフォルニア州の上部中新統カピストラノ層ならびに上部白亜系のウィーラーゴージ層などの礫質の海底チャネル充填堆積物の調査をとおして,礫質ベッドフォーム認定と多様席の確認,ならびに礫質ベッドフォームを特徴づける構成堆積相の時空的配列パターンをさらに詳しく検討する予定である。一方,前年度までに詳しい野外調査が実施された地域においては,礫質デューン堆積物を構成する堆積相を対象にγ線強度や帯磁率などの定量的なデータを取得し,堆積相の定量化を行う予定である。また,堆積構造の特徴とともに礫配列の特徴をモデル化に追加するため,野外調査では礫のファブリック解析を併せて実施する予定である。さらに,1次元での礫質タービダイトの異なったタイプの堆積相の重なり様式の特徴を定量化し,重なり様式のパターンが礫質ベッドフォームの移動と累重によってモデル化することの妥当性を検討することも,2018年度の大きな研究計画となっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
千葉大学の会計システムにおいて,平成30年3月26日時点で「その他」の使用額が198,251円であることが確認され,該当年度の予算総額900,0000円を有効に全てを使用したと判断した。しかし,原因は不明であるが,平成30年度に入り,当会計システムで「その他」の使用額が187,571 円であり,使用額の修正を求められた。 したがって,差額として平成30年度に繰り越される10,680円は,該当年度のデータ整理に関わる消耗品の購入の当て,有効に使用する予定である。
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