研究課題
・本研究課題の構造地質学的研究,変成岩石学的研究,地質年代測定の研究の遂行のため,それぞれの研究に最適な岩石試料を系統的に採取する必要がある。これまでに島根大学に蓄積された情報をもとに,フィールド地質調査と岩石試料採取を行った.具体的には四国東部高越地域,四国中央部別子地域瀬場谷,肉淵谷,小女郎川流域の三波川変成帯,島根県江津地域の周防変成帯,岡山県大佐山地域の蓮華変成帯,隠岐島後の飛騨変成岩についての地質調査と岩石試料の採取を行った.また,キルギス・マクバル地域の高圧~超高圧変成岩分布地域の地質調査と岩石試料の採取を行った.・高越地域,別子地域の三波川変成帯,江津地域の周防変成帯,長野県白馬地域の蓮華変成帯,キルギス・マクバルのエクロジャイト及び青色片岩について岩石記載,EPMAによる変成鉱物の化学分析行った.岩石記載データをもとに地質年代測定を実施する試料の選択を行った.特に江津地域の青色片岩は,周防帯ではこれまで考えられていなかったエクロジャイト相に相当する変成度に達していることが判明し,年代測定の重要性が明らかになった.・眉山地域のざくろ石青色片岩,江津地域の青色片岩,中国内モンゴル地域の青色片岩等の変成履歴に関する論文を出版した.三波川帯低変成度部~秩父帯北帯,江津地域の周防帯,若桜及び白馬地域の蓮華帯,モンゴル・チャンドマン地域の高圧型変成岩等に関する学会講演を行った.・三波川帯エクロジャイトにおいてその存在が明らかになってきたYo-Yoテクトニクスが,西南日本内帯の周防変成帯及び蓮華変成帯,キルギス・マクバル地域,モンゴル・チャンドマン地域のエクロジャイトをはじめとする高圧型変成岩の形成においてもYo-Yoテクトニクスが関与している可能性が高まった.
2: おおむね順調に進展している
・地質調査,岩石記載,変成作用の解析に関してはおおむね当初の計画どおり順調に進められた.・特に,江津地域の青色片岩に関しては,新たにざくろ石藍閃石片岩の岩石試料が得られたほか,青色片岩のシュードセクション・モデリングによりこれまで考えられていた以上の温度・圧力条件の変成作用を受けていることが明らかになった.・一方,ICP-MSにによるU-Pb年代測定法の確立に関しては,装置の不具合のためあまり進める事ができなかった.
・昨年度の研究によってさらにフィールド地質調査,岩石試料採取が必要となった地域(別子地域瀬場谷及び権現,江津地域の高変成度青色片岩,若桜地域のローソン石青色片岩)の現地調査を行う.・EPMAを用い,変成鉱物の化学分析を行う.岩石記載のデータと合わせ,各変成岩の変成P-T経路の検討を行う.変成条件の推定にあたっては種々の地質温度圧力計を駆使するとともにTHERMOCALC,pseudosection解析を用いてできるかぎり精度の高い推定を行う・江津地域の高変成度青色片岩について,40Ar/39Ar法またはK-Ar法による年代測定を行う.これにより,高変成青色片岩の年代を周防変成岩(200Ma)及び蓮華変成岩(300Ma) との対比をを行う.尚,年代測定は外部委託とする.・昨年度得られた研究成果の学会発表(日本地質学会,日本鉱物科学会,IEC,など)と三波川エクロジャイト,江津青色片岩に関する研究成果の論文化を行う.
・昨年度は当該科研費以外の研究資金が潤沢にあったため,それらを優先的に使用し,今年度以降の支出に備えた.
・当初の使用計画に加え,昨年度の研究により緊急に必要となった江津地域の高変成青色片岩の40Ar/39Ar法(またはK-Ar法)年代測定の外部委託に使用する.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件)
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