研究課題/領域番号 |
16K05578
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 亮吏 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (00379819)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 年代測定 / 火山噴火年代 / 元素分配 / 放射非平衡 |
研究実績の概要 |
本研究は、238U―230Th放射非平衡を用いた火山噴火年代測定法を確立し、これを火山岩の年代測定に適用すること、さらにこれに関連する、珪酸塩メルト―液相―気相間反応過程における、元素・同位体分別とその天然試料への応用を目的としている。平成28年度は、他の年代測定法を用いて年代値が確認されている火山岩を用いた238U―230Th放射非平衡年代測定を行うことにより、本分析方法の確度を検証することを計画していた。しかしながら、同年10月に発生した鳥取県中部地震により、研究代表者が所属する研究機関は被災した。地震発生後は、施設内の安全確保や、破損した機器の被害状況確認、被災機器の復旧作業に多くの時間を割くこととなり、当初計画していた研究を一旦中断せざるを得なくなった。特に、本研究課題を遂行する上で必須となる表面電離型質量分析計(TIMS)およびマルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)への被害は甚大であり、その復旧修理を試みたものの、製造元からは復旧不可能と判断されたため直ちに研究を遂行することは困難となった。そのため、当初の研究計画を変更する必要が生じた。 平成28年度後半から平成29年度は当初平成30年度に計画していた研究のうち、珪酸塩メルト―液相―気相間における元素分配および軽元素同位体分別に関する研究を先行実施した。さらに、震災復旧に係る措置により、平成29年度後半にTIMSおよびMC-ICP-MSが所属研究機関に導入されたことから、これらの分析機器のインストールと分析方法のセットアップを行った。これらは当初の研究計画にはなかったものであるが、本研究課題を遂行する上で必要不可欠であるため、計画を変更して行うこととなった。最終年度である平成30年度には、元素、同位体分別および放射非平衡火山噴火年代測定法を用いた応用研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年10月21日に発生した鳥取県中部地震により、研究代表者が所属する研究機関は甚大な被害を受けた。そのため、震災後一定期間、全ての研究を中断し、被災機器の復旧作業等に多くの時間を費やす必要が生じ、本研究計画の遅れとその変更を余儀なくされた。そこで、平成28年度後半から平成29年度には、平成30年度に計画していた後半には、珪酸塩メルト―液相―気相反応過程における、元素・同位体分別過程メカニズムを解明するための実験を前倒しして行った。予察実験を行うために、高精度酸素・水素同位体分析方法の改良を行い、これを珪酸塩メルト―気相間における元素・同位体分別が生じたと考えられる天然試料に応用した。さらに、大陸縁辺部における火成活動の時空間変化とマグマ成因に関する研究を行うことにより、年代測定に必要となる火山岩試料の基礎的データを得た。 また、平成29年度後半には、震災復旧措置により、質量分析計2台の新規導入が決定し、これらの機器のインストールと分析方法のセットアップを行った。研究設備の復旧により、平成30年度には当初計画していた研究について一部研究計画の変更はあるものの、その遂行が可能となる見込みが立った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成30年度には、火山岩中の石基鉱物間の238U―230Th放射非平衡を用いた火山噴火年代測定法を天然試料に応用することにより、この新しい噴火年代測定方法の有効性とその科学的意義について考察し、その成果を発表する。また、本研究課題を遂行する課程で新たに発見した珪酸塩メルト―気相間反応による軽元素同位体分別に関する研究について、天然試料への応用研究を行い、その成果を発表することも計画している。
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