研究課題/領域番号 |
16K05583
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
新正 裕尚 東京経済大学, 経営学部, 教授 (60312013)
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研究分担者 |
折橋 裕二 東京大学, 地震研究所, 助教 (70313046)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 西南日本弧 / 日本海形成 / アルカリ玄武岩 / 苦鉄質火成岩 / Ar-Ar年代 |
研究実績の概要 |
西南日本弧の海溝寄り地域に分布する中新世玄武岩質岩から5試料を選び、ドイツのポツダム大学の希ガス質量分析計を用いてAr-Ar年代測定を行った。その結果次の事柄がわかった。(1)足摺岬岩体の後期岩脈のアルカリドレライトからは、11.74Maのプラトー年代が得られた。これは岩体本体のアルカリ花こう岩や閃長岩類の約13MaのU-Pbジルコン年代と整合的である。(2)種子島のアルカリドレライト岩脈から15.16Maのプラトー年代が、四国中央部新宮のアルカリ玄武岩から12.87Maのプラトー年代が得られた。これらは既報のK-Ar年代とは合致せず、これらの岩脈が西南日本弧の回転より後に形成されたことを強く示唆する。足摺岬岩体も含めて西南日本の回転後すなわち四国海盆の沈み込み開始以降に西南日本前弧域でアルカリ玄武岩質マグマが形成したメカニズムを考える必要がある。(3)紀伊半島中央部の玄武岩岩脈試料から13.89Maの、奈良盆地の玄武岩質岩脈から16.10Maのプラトー年代が得られた。前者は紀伊半島の主要な中新世火成活動(瀬戸内火山岩類および外帯花こう岩類)より若く、後者は古い。前者については周辺のいくつかの小規模な貫入岩体からは14Ma前後のU-Pb年代が得られており活動の関連を考える必要がある。後者については、苦鉄質ではあるが瀬戸内火山岩類のようなマグネシウムに富むものではなく、中部地方に分布する、西南日本の回転前の島弧火成活動によるものとの対比を考えている。 さらに山陰の松江地域の中新統の火成岩類の予察的調査および試料採取を行った。主に過去の研究で西南日本弧の時計回り回転の時期の拘束に用いられた古地磁気データの得られたサイトを中心に試料採取を行っている。これらの試料については、全岩化学分析とジルコンU-Pb年代測定を行うための試料調整を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度計画にある西南日本海溝寄り地域の苦鉄質火成岩類のAr-Ar法による年代測定は順調に行えた。試料性状に依存するため、良好なデータが得られない可能性もあったが、6試料中5試料から意味のある年代が得られた。特にいくつかのデータはやや疑問のあった既報年代を更新するものであり、それらに基づいたマグマ成因論について考察中である。山陰地方の中新統のU-Pb年代測定についてはまだ行っていないが、基本的なパイロット試料は採取済みであり、マシンタイムが確保され次第分析を実行する。
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今後の研究の推進方策 |
28年度に実施した研究過程で、文献調査および現地での観察によると、山陰地域の中新統についてはローカルな層序区分等における研究者間の見解の相違は深刻であり、年代測定を行う試料については極めて慎重な選択を行う必要があることが判った。したがってパイロット的な年代測定の結果を踏まえて再度地質調査と試料採取を行い、地質学的に精度の高いデータセットを得られるように努める。 中部地方の苦鉄質火成岩の起源については、これまでまとまった全岩化学組成データがないので、それらのデータセットを求めてから年代測定に移る。28年度の研究でえられた奈良盆地の16.1Maの玄武岩を含めて、西南日本弧の時計廻り回転前の島弧火成活動を探求する目的でこれらの分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究先の希ガス質量分析の機器利用等が継続中のため、29年度の実験終了時に支払いが生じるため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度も共同研究として継続して行う実験の遂行により発生する機器利用および業務委託による費用支出に使用する。
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