過年度に引き続き、日本海拡大に関連した西南日本弧の時計回り回転前後に形成された火成岩類の野外調査と化学分析を進めた。昨年度採取した九州南西沖の東シナ海に位置する甑島の新第三紀花崗岩について、レーザーアブレーションICP-MSを用いたジルコンU-Pb年代測定をおこない、従来考えられていたよりも300-400万年若い、約1000万年前に形成されたことを明らかにした。従ってこの花崗岩類については西南日本外帯の新第三紀花崗岩類とは異なり、西南日本弧の時計回り回転直後の事変に関連したマグマ活動ではないことがはっきりし、沖縄トラフ等の活動の先駆的な火成活動との関連を考察している。その結果は日本地質学会学術大会で発表し、現在進めている全岩化学分析の結果と合わせて投稿準備中である。さらに関連して、西南日本弧の回転のピボットに近く約1000万年前の既報年代のある火成岩を含む、九州西部天草地域の新第三紀火成岩について野外調査を行い、試料採取をおこなった。これらについては今後同様に全岩化学分析とジルコンU-Pb年代測定を行うべく準備を進めている。その他、昨年度採取した、中部地方奥三河地域の苦鉄質火成岩の岩石記載と全岩化学分析を進めている。 また、昨年度投稿した紀伊半島から九州に分布する西南日本外帯域の中新世珪長質火成岩類のU-Pb年代測定結果をとりまとめ、当時のプレート配置について議論した論文については、査読意見に対応する実験を追加して修正し、11月にオンライン掲載された。
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