研究課題/領域番号 |
16K05585
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高橋 浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 上級主任研究員 (50357373)
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研究分担者 |
山崎 徹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (00396285)
七山 太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 上級主任研究員 (20357685)
御子柴 真澄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (50358082)
志村 俊昭 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (70242451)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 北海道中軸帯 / 日高帯 / 常呂帯 / 日高変成帯 / 中の川層群 / U-Pb 年代 / ジルコン |
研究実績の概要 |
日髙変成帯の形成プロセス及び北海道中軸帯のテクトニクス解明のため以下の研究を行った. ・日高変成帯南部の深成・変成岩類の野外調査,ジルコンU-Pb年代測定用試料採取を行った. さらに,採取試料の岩石薄片を作成し顕微鏡観察を行い,年代測定用ジルコンの分離とカソードルミネッセンス像の観察を行いすべてのジルコンに変成作用によると考えられる再結晶リムが形成されていることを確認した.その後,2試料(猿留川及び札内川の片麻岩)についてジルコンの砕屑性コアと再結晶リムのU-Pb 年代測定を行った.その結果,札内川の試料について砕屑性コアで53.1 Ma,再結晶リムで39.6 Ma(いずれも最若粒子集団加重平均値)を得た. ・中の川層群について,野外調査・試料採集を行い,堆積年代決定のため,酸性凝灰岩2試料及び砂岩2試料のジルコンU-Pb年代測定を行った.酸性凝灰岩は59 Ma及び57 Ma,砂岩は58 Ma及び55 Ma(いずれも最若粒子集団加重平均値)を示し,中の川層群の堆積年代は59-55 Maと見積もられた.さらに,日髙帯の地体構造を明らかにするため,日髙帯北部のトムラウシ地域において,野外調査,試料採取,岩石薄片作成及び顕微鏡観察(角閃岩),泥質岩中のジルコン,U-Pb年代測定を行った. ・中の川層群南部の広尾コンプレックス及びそれとの比較のために常呂帯緑色岩類を構成する緑色岩類について野外調査・試料採取を行い,岩石薄片を作成し顕微鏡観察を行った後,XRF及びICP-MSによる化学分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日髙変成帯上部層変成岩類の変成年代を明らかにするため2試料(猿留川及び札内川の片麻岩類)からジルコンを分離し樹脂にマウント後,カソードルミネッセンス像観察を行い,すべてのジルコンに変成作用によると考えられる再結晶リムが形成されていることを確認した.これらのジルコンについて,Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry(LA-ICP-MS)によるU-Pb年代測定を行い,札内川の黒雲母片麻岩から39.6 Maの変成年代(再結晶リムの最若粒子集団加重平均値,n=4)及び53.1 Ma以降の堆積年代(砕屑性コアのの最若粒子集団加重平均値,n=6)を得た.猿留川の片麻岩のジルコンU-Pb 年代測定結果は,再結晶リムで45.5 Ma(最若粒子集団加重平均値,n=5)であった.しかし,これらの値はコンコーディアにのっておらず,砕屑性コアの部分を巻き込んだ値の可能性がある.また,楽古川流域で採取した,より低変成のホルンフェルス中の黒雲母を分離し,K-Ar年代測定(予想年代40 Ma)を,現在実施中である.中の川層群については,堆積年代決定のため,酸性凝灰岩2試料及び砂岩2試料のジルコンU-Pb年代測定を行い,堆積年代は59-55 Maと見積もられた.さらに,日髙帯北部のトムラウシ地域において,野外調査,試料採取,岩石薄片作成及び顕微鏡観察(角閃岩),泥質岩中のジルコン,U-Pb年代測定を行った.また,中の川層群南部の広尾コンプレックスを構成する緑色岩類について,野外調査,岩石薄片作成及び顕微鏡観察,XRF(主成分),ICP-MS(微量成分)による化学分析を行った.
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今後の研究の推進方策 |
日髙変成帯上部層の変成年代を明らかにするため,弱変成ホルンフェルス中の黒雲母K-Ar 年代を測定し,日髙変成帯上部層変成岩類の変成年代を推定する.また,これまでに得られた日高変成帯上部層の深成・変成岩類のジルコンU-Pb年代について,既存のK-Ar年代等を併せて,深成岩類については岩体冷却史を検討し,変成岩類については変成年代を確定するとともに原岩の供給源の解析を行う. 北海道中軸帯の地体構造を明らかにするため,これまでの野外調査で得られた地質データを整理した上で,日髙帯北部に分布する堆積岩類の野外調査・試料採取を行う.さらに,採取試料のジルコンU-Pb年代を測定し,堆積年代を明らかにし,後背地解析を行い,堆積岩類の帰属を検討する.また,常呂帯の緑色岩の化学分析及びデータ解析を引き続き行い,中の川層群の緑色岩と比較検討する. 以上の調査,分析で得られた地質,年代,化学データを整理統合し,JpGU, AOGS, AGU, EGU大会等において口頭発表し,最終的には,Island Arc, Gondwana Research, Geology等の国際誌への投稿を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の志村及び御子柴が多忙だったため,計画していた野外調査や化学分析を実行できなかったため,次年度使用のために回した.
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次年度使用額の使用計画 |
志村と御子柴の平成17年度野外調査旅費に使用する.
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