研究課題/領域番号 |
16K05586
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
内野 隆之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (40466230)
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研究分担者 |
原 英俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (60357811)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地質調査 / 試料採取 / 苦鉄質岩 / 斜長岩 / 化学分析 / 年代測定 / 鏡下観察 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,付加体中に含まれる海洋地殻の断片である苦鉄質岩の地球科学的特徴及び形成年代を明らかにすることで,中生代の古太平洋地域でいつどのような海底火成活動が起き,それがいつどのように海溝域で沈み込んだか,という海洋地殻の進化過程を解明することである. 研究初年度である2016年度は,内野と原が三重県志摩半島鳥羽地域に分布する御荷鉾帯及び秩父帯北帯において地質調査を4日間行い,分析に適した細粒苦鉄質岩と斜長岩の試料採取を行った. 細粒苦鉄質岩(玄武岩・ドレライト)は全岩化学分析用であり,御荷鉾帯から4試料,秩父帯北帯から7試料採取した.この全岩化学分析は2017年度に行う予定で,この分析から両帯の苦鉄質岩が形成された場所・環境の判明が期待される. 斜長岩はジルコン年代測定用であり,御荷鉾帯から4試料採取した.本研究では苦鉄質岩の形成年代の決定を目的にしているが,同岩には年代を測定できる鉱物がほとんどないため,年代測定が可能なジルコンを含むことがある斜長岩を対象とした.粗粒苦鉄質岩(ドレライト・斑れい岩)に密接に伴う斜長岩は,苦鉄質岩を形成したマグマと同一の起源をもつと考えられるため,斜長岩の年代は苦鉄質岩の年代をほぼ表しているといえる.この年代測定も2017年度に行う予定である. 苦鉄質岩の鏡下観察の結果では,御荷鉾帯のものは普通角閃石を普遍的に含み,それを全く含まない秩父帯北帯のものとは異なることが判明した.それらは異なる環境で形成された可能性を示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は分析に適した試料を採取することが最大の目標であったが,それは概ね達成できた.試料採取に関しては,地質踏査を行った上で,どの露頭が分析に適しているか(変質・変成や変形が弱いか)を判断する必要があるため,効率的かつ丹念な地質調査が求められるが,予定通りの数の試料が得られた点では評価できる. ただし,対象地域は紀伊半島と関東山地であるが,紀伊半島のみの試料採取となった. 御荷鉾帯と秩父帯北帯の苦鉄質岩の岩石学的特徴の把握は,全岩化学分析によるところが大きいが,鏡下観察でも概ねの見通しはつけることができた.
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今後の研究の推進方策 |
2年目である2017年度は,まず,もう一方の研究対象地域である関東山地における御荷鉾帯・秩父帯北帯の苦鉄質岩及び御荷鉾帯の斜長岩の試料採取を行う.次に,紀伊半島と関東山地から採取した苦鉄質岩の全岩化学分析を行い,形成場の推定を行う.現状,鏡下観察で御荷鉾帯と秩父帯北帯とでは異なる特徴が認められるが,化学組成からもそれを裏付ける結果が期待される. 次に,両地域から採取した斜長岩を粉砕し,ジルコン粒子を抽出する作業を行う.ジルコンが得られたら,U-Pb年代測定を行い,斜長岩(ひいいては苦鉄質岩)の形成年代を決定させる.万が一,ジルコンが含まれていなかった場合は,追加の試料採取を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本業である地質図幅の作成(そのうち1つは発行)に多くのエフォートを割く必要があったため,2016年度は紀伊半島での試料採取のみとなり,分析を行うことができなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した助成金は,2017年度の全岩化学分析及び年代測定の費用に回す予定である.
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