研究課題
今年度は,長崎県壱岐島の芦辺港において,昨年度とは異なる別のコア試料を用いて,貝形虫分析,粒度分析,CNS元素分析などを行った.その結果,調査地域における時間空間的な変動を復元することができ,約6600年前に海水準のピークと暖流流入のピークがあったことが明らかになった.また,約5200年前に津波によると推定されるイベント堆積物の存在を確認した.長崎県対馬市の舟志湾から採取した約3 mのコアについても,今年度は高時間分解能で貝形虫種のKrithe japonicaの殻の微量元素分析を行った.その結果,既存研究と比較できる詳細な時系列変化が得られた.比較の結果,K. japonicaのMg/Ca比の時系列変化は,Koizumi (2008)などによって日本海における珪藻群集に基づく水温換算式により求められた対馬暖流の水温変動とほぼ一致した.このようにこの手法の有効性が示唆された.具体的には,約1600 cal BCEから約100 cal CEの縄文時代後期から弥生時代後期までは比は相対的に高く,変動は少ない.その後,比は減少し,約1000 cal CEから再び増加した.これらは古墳寒冷期や中世温暖期に対応すると推定される.その後のいわゆる小氷期では細かな変動はあるものの,大きく比が減少することはなかった.他にも上記の研究結果との対比のため,九州北部の海域や日本沿岸から得られたコア試料について詳細に検討し,上記の成果と比較した結果,約600-700 cal CEや1100-1300 cal CEにおいて,貝形虫群集が変化する共通した現象が認められた.さらに,宮城県石巻市の長面浦においてコアが掘削され,その試料を用いて貝形虫分析を行った.しかしながら,産出した貝形虫群集は比較的広温性の汽水から内湾域に生息する種により構成され,暖流の強い影響を示唆する種は認められなかった.
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