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2017 年度 実施状況報告書

前期-中期中新世西南日本弧解体新書:変動帯堆積学と古生態学のフロンティアを拓く

研究課題

研究課題/領域番号 16K05591
研究機関高知大学

研究代表者

奈良 正和  高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (90314947)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワード古生態学 / 堆積学 / 生痕学 / 古生物学 / 古環境学
研究実績の概要

今年度も昨年同様,西南日本弧中新統をはじめとした各地での野外調査にもとづき,中新世前孤域の古環境,古生物群集,堆積作用等の復元を行ってきた.その結果,四国西部の前孤域で生じていた砕屑物の大量生産と過堆積がその場のテクトニクスに支配された地域的な現象であった可能性が高いことを見いだし,日本地質学会第124年大会での口頭講演をおこなう予定であった.ただ,残念なことに,この講演は近傍を通過した台風の影響で中止となってしまったが,この大会での“ハイライト講演”の1つに指定され,注目を集めた(なお,著作権保護の観点から,公開された講演要旨は有効となっている).この学会では,上記の他にも四国西部新生界の層序等に関する2件の講演を行ったほか,さらに特筆されることとして,付随して開催される野外巡検「テーマ:久万層群と三崎層群:日本海拡大期の西南日本弧前孤中新統が記録するもの」の筆頭案内者をつとめた.その結果,本研究課題に関する最新の成果を野外の露頭にて紹介することができ,参加した一線の研究者らと討論を行い,多くのフィードバックを得ることができた.
また,北九州市立自然史・歴史博物館ならびに愛媛大学で開催された日本古生物学会の第2017年年会と第167回例会では,四国西部中新統の古環境や古生態復元に関する講演を行った.
さらに,台北で開催された14th International Ichnofabric Workshopにおいて,本邦ならびに台湾の中新世生痕化石に関する講演2題を行い,成果のブラッシュアップにつとめた.その後,台湾の中新世アジア大陸縁辺堆積物を対象に台湾大学やバーゼル大学(スイス)の研究者らと共同研究を行い,いくつかの新知見を得た.
このほか,西南日本弧中新統でえられた結果と比較するため,北部九州の漸新統,関東南西部の中新統等の調査も行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実績の概要でも述べたが,三崎層群,久万層群,田辺層群といった中新世西南日本弧前孤域の堆積物を対象に,コンスタントに野外調査を続けたほか,当時のアジア大陸縁辺の安定な場で形成された中新統の調査結果などをあわせて考えることで,変動帯の古生態学に関して新たな知見が得られつつある.その一部は,1編の査読付き論文のほか,2件の国際学会講演を含む8件の学会講演(うち1件は台風により講演中止,ただし,著作権保護の観点から講演要旨は有効)として公開した.なお,これらの学会講演のうち,日本地質学会第124年大会で講演予定であった1件は“ハイライト講演”に指定された.さらに,この第124年学術大会では,本研究の成果を主要なテーマの1つとした野外巡検が催行されている.これは,本研究課題の客観的評価を反映したものと言えるだろう.

今後の研究の推進方策

今後も,日本海拡大期の前弧海盆堆積物である三崎層群や田辺層群,前弧陸域の堆積物である久万層群などの西南日本弧中新統を中心にすえ,野外調査をメインとした研究を行っていきたい.これに加え,日本海拡大に伴う西南日本弧の回転運動のピボット域にあたり,厚さ5000 mを超える中新統からなる長崎県の対州層群,そして,これとは反対に日本海拡大時にはアジア大陸縁辺の安定な場に位置していた沖縄県の中新統八重山層群においても野外調査を行う計画である.この様に,様々なセッティングで形成された同時代の堆積物を比較検討することで,活発な構造運動と堆積作用,古生態系との関係を抽出していきたい.
また,例年のことではあるが,本研究課題は独創性ゆえ,国内では関連する研究者の数がきわめて限られている.したがって,国際的な研究集会にも積極的に参加し,情報交換を行う予定である.次年度はカナダのケベック市で開催される,世界最大規模の堆積学に関する国際会議「20th International Sedimentological Congress」において,本研究の主たるテーマに関する口頭講演を行う予定である.以上の様に積極的に野外調査を行いデータを蓄積するとともに,国内外において研究成果の発信もつづけ,得られるフィードバックを元に研究内容のブラッシュアップにつとめる予定である.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] 国立台湾大学(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      国立台湾大学
  • [国際共同研究] University of Basel(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      University of Basel
  • [雑誌論文] 久万層群と三崎層群:日本海拡大期の西南日本弧前孤中新統が記録するもの2017

    • 著者名/発表者名
      奈良正和・楠橋 直・岡本 隆・今井 悟
    • 雑誌名

      地質学雑誌

      巻: 123 ページ: 471-489

    • DOI

      https://doi.org/10.5575/geosoc.2017.0035

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 白亜系犬吠埼層産標本群の観察に基づく生痕化石Phoebicnhus trochoidesの新解釈2018

    • 著者名/発表者名
      川口昌人・奈良正和・清家弘治
    • 学会等名
      日本古生物学会第167回例会
  • [学会発表] 前期-中期中新世西南日本弧の古生態学:三崎層群堆積盆の特異性2018

    • 著者名/発表者名
      奈良正和
    • 学会等名
      日本古生物学会第167回例会
  • [学会発表] Ichnology and palaeoecology of Macaronichnus segregatis degiberti2017

    • 著者名/発表者名
      Nara, M.
    • 学会等名
      14th International Ichnofabric Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] Analyzing the peculiar unknown trace fossil in the Taliao Formation, Taiwan2017

    • 著者名/発表者名
      Pan, Y.-Y., Loewemark, L., and Nara, M.
    • 学会等名
      14th International Ichnofabric Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 高知県土佐清水市爪白の中新世潮汐低地堆積物に見られる生痕化石群集2017

    • 著者名/発表者名
      奈良正和・矢島穂高
    • 学会等名
      日本古生物学会第2017年年会
  • [学会発表] 日本海拡大と西南日本弧の古生態系:中新統三崎層群における海底生態系の特異性とその要因2017

    • 著者名/発表者名
      奈良正和
    • 学会等名
      日本地質学会第124年学術大会
  • [学会発表] 愛媛県上浮穴郡久万高原町の三波川変成岩類中に見られる変斑れい岩体2017

    • 著者名/発表者名
      仲田光輝・楠橋 直・奈良正和
    • 学会等名
      日本地質学会第124年学術大会
  • [学会発表] 愛媛県中部の始新統ひわだ峠層の層序2017

    • 著者名/発表者名
      楠橋 直・安藤友一・松原尚志・奈良正和・栗田裕司・山路 敦
    • 学会等名
      日本地質学会第124年学術大会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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