研究課題
本研究は野外調査を主要な研究手段とするが,2019年度に端を発したコロナ禍によって,野外での活動が十分に行えなくなり,当初計画での最終年度(2020年度)の研究費を2度にわたって繰り越すこととなった.2022年度の研究活動は,このような背景のもとでなされた限定的なものである.こうした中でも,この年度には熊野層群の砂岩薄層を稀に挟在する泥岩卓越層準(沖浜ー斜面堆積物)から,他の砂岩層よりも有意に厚い砂岩を見出し,観察・記載した.この砂岩は,複数回に及ぶ流れの減衰や加速を示す堆積相サクセションを示すことから,津波堆積物の可能性があり,沖浜以深における津波堆積物の特徴を一般化する上での貴重な事例である.また,熊野層群のこれら沖浜ー斜面堆積物のほか,田辺層群や三崎層群などの同環境の堆積物において,特徴的に観察される生痕種を見出し,観察・記載した.そのほか,津波堆積物の可能性が高い田辺層群のイベント堆積物に関する小論(英文)などを公表した他,本研究での成果を基礎とした2件の国際学会講演を行った.これらの講演のうち,タイ国で開催された第6回国際古生物学会議 (The 6th International Palaeontological Congress)では,生痕学のセッションから招待を賜り,本研究の集大成とも言える事柄を中心とした基調講演を行う機会を得た.国際古生物学会議は,古生物学界で最も規模が大きく,また最も権威ある研究集会のひとつである.このことは,本研究で積み上げてきた成果が,国際的にも評価されたことを客観的に裏付ける事実と言えよう.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
島根県地学会誌
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