研究課題
平成30年度は,個眼1つ1つまで保存されたモロッコのデボン紀の三葉虫の標本について,その視野の復元,およびその古生態ついて考察をおこなった.モロッコのデボン紀の地層からは,両眼合せて水平方向に360度の視野を持つ,半円筒形の垂直に直立した複眼を1対備えた三葉虫エルベノチレの完全体が報告されている.この複眼は頂部に屋根をもち,この屋根が目庇(まびさし)の役目を果たし,日中光による眩しい光を防ぐ役目を果たし,浅海の堆積物上で,水平方向の景色が良く見えていたと考えられている(Fortey & Chatterton, 2003).しかし,この考察は推論であるとされ,詳細な議論がされていない.そこで,保存の良いエルベノチレの複眼化石を,当該化石産地を熟知している研究協力者の小野輝雄氏(金生山化石研究会会員)を通じて入手した.クリーニング後の複眼化石は日本でX線CTスキャン装置を用いて断層画像を取得した.その後,3Dスキャナーで10倍に拡大した樹脂模型を作成した.模型を切り,1つ1つの個眼のレンズの厚さ・直径からF値を求めた.複眼1つ1つの個眼の位置はTanaka et al.(2015)の方法で取得した.目庇が機能しているならば,庇で影になる部分の個眼は,影にならない部分の個眼と比較して,明るい像を結ぶためF値が小さくなると考えられる.各個眼を計測した結果,目庇の直下の陰になる部分は,F値が小さかった.しかし同時に周りの個眼の直径よりも大きいことも判明した.これらの事実から,目庇直下は,より大きな個眼(より多くの光受容器)をもつことがわかり,解像度が高く,かつ暗闇に適した眼であることが分かった.また,視野の側面中央には「視野の空白域」も存在する事が明らかになった.このエルベノチレにみられる異なる大きさの個眼レンズの分布と「視野の空白域」の解明には,古生態学的知見が必要である.
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