研究課題/領域番号 |
16K05593
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小松 俊文 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (40336201)
|
研究分担者 |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (00374207)
重田 康成 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, グループ長 (30270408)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 層位・古生物学 / 地質学 / 古環境 / 進化 / 適応放散 / 大量絶滅 |
研究実績の概要 |
北部ベトナムのハーザン省やカオバン省に分布する上部デボン系とランソン省の下部三畳系,ニンビン省の上部三畳系などで複数回にわたる地質調査を実施し,微化石を含む古生物および堆積学分野の様々なデータを採取することができた. 学会発表は,少なかったものの,日本古生物学会年会の学術講演では,本研究課題で得た北部ベトナム産の前期三畳紀二枚貝類を用いて発表を行い,同学会例会では,上部三畳系ソイバン層の軟体動物化石や堆積相に関する予察的な研究成果について報告した.また,共同発表ではあるものの,地質学会の西日本支部会などで後期デボン紀のコノドント化石生層序や安定炭素同位体比の変動パターンについて報告した.この研究も北部ベトナムで実施した研究成果で,これによって海洋生物の大量絶滅で知られている下部・上部ケルワッサー事変を特定できたセクションがある. 論文については,平成25-27年度基盤研究(C)〔25400500〕からの継続研究の成果をPalaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecologyに公表することができた.これは,北部ベトナムに分布するバックテゥイ層の三畳紀前期スミシアン・スパシアン境界で生じた海洋無酸素事変とそれに伴うTOCや安定炭素同位体比の変動パターン,コノドントやアンモナイトなどの種の消長を報告した分解能の高い研究である(Komatsu et al., 2016).また,この他にも同層から産出した放散虫化石を国際誌に報告し,これらが古生代末期の大量絶滅を生き延びた古生代型の群集であることを明らかにした(Takahashi et al. in press).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた以上に研究は順調に進んでおり,特に北部ベトナムでの野外調査では,大量絶滅などを記録してる可能性が高い露頭やセクションと多くの化石産地を発見した.また,採取した岩石試料を処理した結果,コノドントやテンタキュロイド,オストラコーダ,放散虫などの微化石を多数得ることができ,地質年代や大量絶滅などを検討する上で重要な古生物学分野のデータを得ることができた.さらに露頭状態の良いセクションでは,堆積環境を復元する上で重要な堆積学的なデータを多数得ることが出来た.熊本地震の影響で電子顕微鏡やいくつかの研究機器が使えない状況であったため,微化石の電子顕微鏡画像などは撮影できなかったが,これらの作業や分析の遅れを差し引いても期待以上の研究成果が出始めている.
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度は,野外調査で予想以上の成果が上がり,現地での調査や試料採集に要する時間が増えたため,今年度の研究費を前倒しで使用している.そのため,今年度は野外調査を実施する予算が必ずしも十分とは言えないため,財団などの研究費を取得して調査を行う予定である.また,熊本地震の影響で滞っていた分析や電子顕微鏡画像の撮影などは,昨年度分の遅れを取り戻す必要があるため,得に精力的に進める予定である.
|