研究課題/領域番号 |
16K05595
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
三枝 春生 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (70254456)
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研究分担者 |
池田 忠広 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員(移行) (50508455) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 恐竜 / 竜脚類 / 白亜紀 / 脳函 / ティタノサウルス形類 / 気嚢憩室 / 肋骨 / 篠山層群 |
研究実績の概要 |
29年度にはTambatitanisの脳函の内部構造の解析およびアルゼンチンでの化石標本調査を行った. Tambatitanisの脳函の骨迷路の背側に従来知られていない空洞があることが示唆された.しかし,使用した28年度撮影のCT像は解像度が不足しており,結論を得るにはより良好なCT像が必要である. アルゼンチンでは同国産の竜脚類,特にティタノサウルス類の中軸骨格,脳函,腸骨の含気構造を調査しその結果をTambatitanisと比較した.肋骨を保存しているティタノサウルス類骨格標本では他の竜脚類よりも左右に幅の広い胴体を持つことが示唆された.しかし,アルゼンチンの博物館に収蔵されている竜脚類の肋骨は予想よりも少なく,胴体の幅の進化史を明らかにするにはアフリカ,北米,モンゴル産の標本の検討が必要である.アルゼンチン産ティタノサウルス類の脳函はTambatitanisの脳函に類似しており,これら類似点は両者の共有派生形質である可能性がある.腸骨の含気構造については,従来報告されていた一例は靭帯等の付着面の間違いであり,腸骨に明瞭に含気構造を持つ事例はTambatitanisとアルゼンチンのNeuquensaurusだけであることが確認された. 上記の3項目は当初予定していた研究項目であるが,これとは別に篠山層群分布域内で行われたトンネル工事で出た岩砕を調査する機会を得た.その結果角竜類とともにTambatitanisのそれに酷似した竜脚類の歯の化石を発見した.Tambatitanisの骨格化石が産出している層準は篠山層群大山下層の上部なのに対して,トンネル工事の行われた層準は同層の下部に当たることから,Tambatitanisあるいはそれに近縁な竜脚類の存続期間は数百万年有ることが示唆された.よりよい骨格化石等の発見により,篠山層群内での竜脚類の分布が明確になることが望まれる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルゼンチンでの調査が29年度におけるもっとも主要な調査研究項目であり,そのためには最低でも3週間の出張が必要であった.当初の予想ではこの程度の期間の出張は可能と考えていたが,研究実績でも述べた,篠山層群分布域で行われたトンネル工事で得られた岩砕の調査およびそれに伴う様々な関係者との調整など当初予定していなかった勤務先での業務が生じ,これにより長期にわたり出張を行うことが容易でなくなった.その結果アルゼンチン調査に出かけることができたのは年度末であった.このため,アルゼンチン調査で得られたデータの分析は年度内に完了することができず,30年度にも行う必要が出てきた.またこのため,成果の公表にも遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
29年度のアルゼンチン調査で得られた写真データの処理をまず行う.この処理で得られるのは脳函,胴椎および肋骨等中軸骨格および腸骨の3次元形状データである. 脳函の3次元形状をTambatitanisのそれと比較し脳函の外部形態を新たにコーディングしたマトリックを用いて脳函の形質のみでTambatitanisの系統関係を求めてみる. アルゼンチン産ティタノサウルス類の胴椎の3次元形状データをもちいてモンゴル産ティタノサウルス類Opisthocoelicaudiaの中軸骨格の欠損部分を復元し,その胴体形状の正確な復元を行う.さらに中軸骨格がよくそろっているマダガスカル産ティタノサウルス類Rapetosaurusの写真データを得るためにシカゴのフィールド博物館において調査をおこなう.合わせてディプロドクス上科および基盤的マクロナリア類の中軸骨格の事例としてDiplodocusおよびCamarasaurusの骨格写真データをピッツバーグのカーネギー博物館およびソルトレイクのブリガムヤング大学で収集する.これら,ティタノサウルス類およびそれ以外の竜脚類の中軸骨格を比較し,ティタノサウルス類の左右に広い胴体形状の特異性を明らかにする. 腸骨の3次元形状データから,腸骨翼内に侵入した気嚢の位置を推定し,これをこれまで尾椎,胴椎などで推定されている気嚢の位置の復元例と比較する.
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務先において当初予定していなかった業務(トンネル工事によって生じた岩砕の緊急調査等)により,長期の出張が年度末まで不可能となった.そのため調査旅行は予定よりも短縮されて年度末に実行せざるを得ず,日程が短縮された分の調査旅費が未使用となった.次年度ではこの短縮された日程分の調査旅行を行う.
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