研究課題/領域番号 |
16K05596
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
石田 直人 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20534746)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放散虫 / 3Dスキャン技術 / X線マイクロCT / 古生物学的記載 |
研究実績の概要 |
本課題は,X線マイクロCTによる放散虫(ポリキスティナ)殻の3D形態データの古生物学的記載における有用性を示し,新たな放散虫研究ツールとしての定着を目指すものである.研究初年度にあたる平成28年度は,下記に記す3項目を実施した. 1.X線マイクロCTによる放散虫殻スキャニング:X線マイクロCTによる放散虫殻スキャニングは既に確立させた技術である.機器が設置されている摂南大学に赴き,2回にわたりスキャン作業を実施した.順調に作業は進み,約20個体分の3D形態データが取得された.この際,これまでの作業フローを見直し,より安定かつ迅速に作業を進めるため,独自設計による部品を新規に作製することにした. 2.現生放散虫の生態観察:放散虫殻の形成順序や内部の微小な構造の生態上の機能は,殻のみの観察だけでは明らかにならない.そこで琉球大学の施設を利用し,沖縄本島沖で放散虫生体サンプリングを実施した.さらに実験室内において,新たに導入した光学顕微鏡を用いた生態観察,および長時間連続撮影システムによって生態と殻形成の関係を検討した. 3.3Dデータ処理フローの構築:X線マイクロCTによって取得された3Dデータのアウトプットは,PCモニタでの表示,もしくは3Dプリンタによる拡大模型出力となる.生データ取得からアウトプットに至る3Dデータ処理法を再検討し,3Dデータ処理用のソフトウェア,PC周辺機器,および3Dプリンタを新規に導入し,新たな処理フローを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には,予定していた実施内容,(1)X線マイクロCTによる放散虫殻スキャニング,(2)現生放散虫の生態観察,そして(3)3Dデータ処理フローの構築,の全てについて順調に進めることができた.特に,研究に関連する作業フローを細部まで見直し,迅速かつ安定して研究を遂行する体制を構築したことは次年度以降,研究に大きな進展をもたらすと考えられる. 研究の遂行を妨げる大きな問題は生じていないものの,新規に導入した機器類やソフトウェアについては,現時点では作業フローに組み込んだ段階で,操作の習熟が十分とは言えない.予想していた範疇ではあるが,できる限り早く習熟するため,操作を繰り返す必要がある. 以上の状況から,本研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している。」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本課題の研究項目,(1)X線マイクロCTによる放散虫殻スキャニング,(2)現生放散虫の生態観察,(3)3Dデータ処理フローの構築,については,平成28年度に実施した結果から大きく変更する必要はないと判断し,平成29年度は引き続き同様の内容を継続する.但し,見直した作業フローと新規に導入した機器については,円滑に進行できるかの確認や操作の習熟が必要であるため,早いうちにこれに取り組む. 新規に作製した部品のCT機器へのマッチングについては,平成29年度にまず検討する点として挙げる.また,取得したスキャンデータの処理と処理データの出力は,研究成果の新規性・信頼性に直結する重要な項目である.配備したソフトウェア,および3Dモデリング設備については,平成29年度の早い段階から成果をアウトプットできるようにさらに検討を進める.特に,作製される拡大模型はそのまま研究成果としてアピールできるため,学会や普及講演の場などで最大限活用する見込みである. 平成29年度には,本課題前半の成果発表のハイライトと位置付けている国際放散虫研究集会が開催される.これは世界中の専門家が集う学会であり,古生物学的記載という古典分野に先端技術を適用するインパクトをアピールする最大のチャンスである.これに向け,本課題前半の総括を進めたい.
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