研究課題/領域番号 |
16K05600
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
加瀬 友喜 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 名誉研究員 (20124183)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 古生物地理 / 新生代 / 東南アジア / 軟体動物 / 古生態 / マングローブ / 貝形虫 / 多様性 |
研究実績の概要 |
28年度の計画に沿って、フィリピンのビサヤ諸島のネグロス島の中期中新世、セブ島の漸新世から豊富な貝化石群の調査と試料収集を行った。現在試料の剖出作業と登録作業を進めている。この調査の成果の中で特筆すべきは、セブ島南部アルガオ地域の上部漸新統カラガサン層最上部から従来東南アジア産の既知種とは異なるマングローブ性巻貝であるビカリア属の未知種を見出したことである。この種は代表者らのかつての調査によりネグロス島南部の時代不詳の地層からマングローブ性巻貝のセンニンガイや新種の大型のキバウミニナ科巻貝とともに見出している。現在の東南アジアのマングローブ沼湖の貝類群集はセンインガイ、キバウミニアやゲロイナなどの大型種を伴い、それらはマングローブ植物を栄養源とする貝類である(Kase et al., 2015)。今回の発見により、東南アジア型のマングローブ貝類群集が漸新世後期にまで遡ることが明らかとなった。 フィリピン、ミンダナオ島産第四系産の貝類の種同定を進め、巻貝類370種(絶滅種27種)、二枚貝類193種(絶滅種13種)、掘足類11種(絶滅種1種)の合計572種(絶滅種41種、絶滅率7.2%)を認めた。フィリピンの中部鮮新統タルタロ層の貝類の種数は200種を超えず、また予察的ではあるが80%が絶滅種であることを考慮すると、中期中新世から更新世にかけて浅海性貝類の大規模な絶滅事変の存在を暗示すると考えられる。 北西太平洋の新生代海洋生物の大局的な種多様性の変遷を解析することを目的として、フィリピン、インドネシアと日本列島の貝形虫を用いて研究を進めた。その結果、低緯度地域では始新世から徐々に種多様性が上昇し、鮮新世と更新世でもっとも多様性が高くなり、現在はやや減少しているというパターンが得られた。この多様性パターンが他の分類群でも同じかどうかは今後の研究課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は28年10月に採択され、実質研究期間はおよそ5ヶ月間であり、当初の研究計画を進める事が不可能であったが、野外調査は予定通り進めることができたが、採取試料の年代決定のための微化石分析は予定通り進んでいない。29年度の早い時期に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の当初の計画はインドネシアのジャワ島の従来の年代区分を改定するための調査と微化石解析を進める予定であったが、初年度の遅れもあり、現地調査を短縮するとともに、これまでに収集した試料を使ったストロンティウム年代測定を進めることにする。国立科学博物館理工学研究部には同年代測定できる質量分析計があり、また同研究部と地学研究部で進めている総合研究「化学層序と年代測定に基づく地球・生命史の解析」の一環として共同研究を行うことにする。また、東南アジア熱帯地域では化石記録の乏しい漸新世の化石群の試料を収集するため、セブ島南部のアルガオ地域の漸新統カラガサン層の層序と化石群の調査を進める。そのほかは当初の研究計画通りである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は10月採択で、計画の野外調査が現地の乾季である3月になった為。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の現地調査で使用する計画である。
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