研究実績の概要 |
本研究はカンラン石―メルト間のCaO分配のH2O量依存性に着目した含水量計を新たに構築し,これを秋田駒ケ岳火山の玄武岩に適用してマグマの成因を考察することを目的としている.H28度研究により,カンラン石ーメルト間のCaO分配係数を求める上で,メルトからの二次蛍光効果の影響は無視しても差し支えないことが判明した.そこで,既報のモデルをそのまま火山岩に適用することにした.H29年度は秋田駒ケ岳火山の男女岳溶岩・火砕丘(ON),小岳大焼砂堆積物(KO),小岳火砕丘・溶岩流(KDP),女岳1970年溶岩(MN)から合計17試料の玄武岩と安山岩を採取した.それらの試料について岩石薄片の作成と鉱物記載,石基の重液分離,XRFによる全岩と石基の化学組成の分析,EPMAによる斑晶と石基鉱物の化学分析を行なった.分析結果をカンラン石ーメルト間のCaO分配モデル(菅原, 2007),リキダス温度計(Sugawara, 2000),斜長石ーメルト間のCa/Na分配モデル(Ushioda et al. 2014)と酸素分圧計(Sugawara, 2001)等に適用し,マグマの温度-圧力-含水量-酸素分圧条件を明らかにするとともに,それらについて岩手火山と比較をした. KDP,KO,ONはT=1050-1100℃,1-1.5kbar,H2O=2.6-4.2wt%,delta QFM=+0.9程度と見積もられた.全岩化学組成の観点では秋田駒ケ岳火山は岩手火山と比較して分化が進んだ玄武岩が多いが,それに対応するように温度もやや低いことがわかった.また,秋田駒ケ岳火山の含水量は岩手火山と大きな違いはないが,岩手火山と比較してやや低酸素分圧な状態にあることがわかった.
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