研究課題/領域番号 |
16K05606
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
芳川 雅子 京都大学, 理学研究科, 教務補佐員 (00378605)
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研究分担者 |
Python Marie 北海道大学, 理学研究院, 助教 (30533278)
田村 明弘 金沢大学, 自然システム学系, 研究員 (80401884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オフィオライト / 基底部かんらん岩 / メタモルフィックソール / 微量元素組成 / Sr-Nd同位体比 |
研究実績の概要 |
オマーンオフィオライトの基底部かんらん岩とその下位の変成岩(メタモルフィックソール)は、海洋性マントルと沈み込んだスラブのアナログである。中部・南部ブロックの基底部かんらん岩にメタモルフィックソール由来成分による化学・Sr-Nd 同位体組成の変化を観察し、沈み込み開始時のマントルでのスラブ由来成分付加過程の解明を目指している。本年度は中部のSarami・Wuqbah ブロックの基底部かんらん岩と典型的なのハルツバージャイトのSr-Nd同位体組成を得る事を目指し、単斜輝石の分離を行った。また、北部Fizhブロック・中部Hiltiブロック・南部Wadi Tayin ブロックのメタモルフィックソールを構成する変成岩の一部について全岩の微量元素濃度を得た。Fizhの石英質岩はWadi Tayinの石英質岩(Ishikawa et al., 2005)と類似したMORB(中央海嶺玄武岩)規格化パターンを示す事、Fizhの珪長質岩は希土類元素濃度がWadi Tayinのものより低く、LIL元素(イオン半径の大きい新石元素)は同程度の濃度を示す事が分かった。またWadi Tayinの角閃岩は、Ishikawa et al. (2005)で報告されているより広範な組成幅を示す試料が認められた。Fizhの角閃岩は、重希土類から中希土類元素にかけてやや枯渇するMORB規格化パターンが得られた。今後さらにデータを蓄積し、基底部かんらん岩との関係について検討を加えたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中部のSarami・Wuqbah ブロックの既存試料はSr-Nd同位体分析試料を準備したが、表面電離型質量分析機器の移設とその後の不調のため、測定が行えなかった事による。 また、新たに採取したSarami・Wuqbah ブロックの基底部かんらん岩を粉砕し、単斜輝石の分離を行った。しかし、予想と異なり単斜輝石の回収率が非常に悪く、必要量が採取できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
基底部かんらん岩の単斜輝石のSr-Nd同位体組成を求める。メタモルフィックソールの微量元素組成分析は終了したので、変成岩全岩のSr-Nd 同位体分析を行い基底かんらん岩の単斜輝石のSr-Nd同位体組成と比較し、中部・南部ブロックの基底部かんらん岩に於いても、メタモルフィックソール由来の化学的・同位体組成の変化、すなわち沈み込むスラブ由来の成分の付加が観察されるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中部のSarami・Wuqbah ブロックの既存試料はSr-Nd同位体分析試料を準備したが、表面電離型質量分析機器の移設とその後の不調のため、測定が行えなかった。現在、分析機器は順調に稼働しているので、今後測定予定である。新たに採取したSarami・Wuqbah ブロックの基底部かんらん岩では、昨年度行った鏡下観察と単斜輝石の微量元素性分析結果に基づき、採取した試料の中で単斜輝石を比較的多く含み単斜輝石中の微量元素濃度が高い試料を選定し、それらを粉砕し鉱物分離を行った。しかし、予想と異なり単斜輝石の回収率が非常に悪かった。このため、研究分担者が再度の試料採取を行った。残存試料および再採取した試料から同位体分析に必要な単斜輝石量を採取し、Sr-Nd同位体分析を行う。
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