研究課題/領域番号 |
16K05611
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
野坂 俊夫 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80252948)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海洋底 / 下部地殻 / 斑れい岩 / 変質作用 / アトランティス・バンク |
研究実績の概要 |
南西インド洋海嶺のアトランティス・バンクにおいてIODP 第360次航海で掘削採取された斑れい岩類について,岩石薄片の作成,光学顕微鏡による鉱物の同定と岩石組織の観察,ラマン分光分析装置による層状珪酸塩鉱物の同定,および電子線マイクロアナライザーによる鉱物化学組成の分析と元素濃度マッピングを行った。 その結果,局所的な熱水変質作用によって初生かんらん石,初生単斜輝石,初生斜方輝石,初生斜長石および鉄酸化鉱物が分解し,Ca角閃石,Mg-Fe角閃石,Mg-Fe雲母,緑泥石,滑石,蛇紋石,粘土鉱物などの含水鉱物が生成していることが明らかになった。さらに雲母と緑泥石には組成の多様性があることと,滑石,蛇紋石,粘土鉱物は岩石中のドメインごとに分布と組成の不均質性を持つことが明らかになった。これらの点はこれまでに詳しく報告されておらず,南西インド洋の下部地殻における変質作用の全体像を理解するうえで重要な新知見となった。 本研究の目的は,南西インド洋の斑れい岩を足がかりとして,海洋下部地殻の変質作用の全体像を理解することにある。そこで地域間の多様性と共通性を明らかにすることを目的として,アトランティス・バンクの斑れい岩の分析と並行して,他地域の海洋底斑れい岩や,陸上に露出した過去の海洋性リソスフェアであるオフィオライトの分析も行った。それらについて以前から継続して得られていたデータの取りまとめと解析を行い,国内学会と国際学術誌上で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IODP 第360次航海では,アトランティス・バンクの斑れい岩を海底下790mまで掘削することに成功し,良好な岩石試料を採取することができた。その後の薄片作成,顕微鏡観察,鉱物化学組成分析,いずれも順調に進行しており,各種含水鉱物の分布と組成不均質性について重要な新知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
各種変質鉱物について,引き続き主要元素組成の分析を行う。また,あらたに共同研究者の協力を得て,岩石と鉱物の微量元素組成の分析と,層状珪酸塩の透過電子顕微鏡分析を行う予定である。加えて,アトランティス・バンクで過去に採取された岩石についても,IODPにサンプルリクエストを出し,掘削孔ごとの比較検討を行う。さらに,他地域の海洋リソスフェアやオフィオライトの分析も継続して実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規に購入した顕微鏡システムについて一部光学系を高性能のものに変更したことによる予算超過を避けるため,一部の消耗品の購入を次年度に回して全体の支出を抑えた。また投稿論文の出版に遅延が生じたため,予定していた印刷費を次年度に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の繰越金は,研究遂行に必要な物品費と論文印刷費として適正に使用する予定である。
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