研究課題/領域番号 |
16K05613
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
奥平 敬元 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20295679)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 下部地殻 / 斜長石 / 内陸地震 / 結晶方位解析 / 地殻強度 / 細粒化過程 / クリープ変形 / 破壊 |
研究実績の概要 |
地震発生領域直下の下部地殻上部における延性剪断帯の発生・発達過程は,内陸地震の発生において本質的に重要である.本研究では,天然の変形岩試料の解析を通して,下部地殻上部での延性剪断帯の発生・発達過程の解明を目的としている.本年度は,前年度までに採取した岩石試料の変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を継続して行い,その研究成果を国際学術雑誌に発表すること,および12月に開催されるアメリカ地球物理学連合秋季大会において,大学院生・博士研究員とともに研究成果の発表を行うことが主要な課題であった.研究成果としては二つの重要な知見を得ることができた.一つは,斜長石集合体が拡散クリープ(粒界すべり)によって変形する場合,一般には結晶定向配列を示さないとされているが,EBSDによる斜長岩マイロナイト中の斜長石の結晶方位解析の結果,粒界すべりによっても斜長石集合体に結晶定向配列が認められることが明らかとなった.これは,斜長石のような劈開や双晶が発達する鉱物が粒界すべりで変形する場合,ある特定の結晶面で粒界すべりが起きることを示した世界初の例である.もう一つの研究成果は,斜長岩マイロナイトにしばしば認められる特徴的な組成累帯構造の成因に関するものである.その特徴的な組成累帯構造の成因としては,高温斜長石の低温での相分離であるという説が提案されており,この相分離は粒径減少を伴うことが期待されるため,下部地殻における主要な粒径減少機構である可能性が指摘されている.しかし,WDSによる鉱物化学組成やSIMSによる酸素同位体組成の解析結果からは,この説は支持されず,等温減圧による二段階成長であることが明らかとなった.これは斜長石の相分離が下部地殻における主要な粒径減少機構ではないことを示唆する.以上のように,本研究では下部地殻における変形・変成作用の詳細に関して,重要な知見を提供することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当初の研究実施計画の通り,12月に開催されたアメリカ地球物理学連合秋季大会において,博士研究員とともに研究成果の発表を行った.また,前年度までに採取した岩石試料の変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を継続して行い,その研究成果を国際学術雑誌に2編にまとめた.そのうち1編は現在査読中であるが,1編は現在執筆中である.このように,学術論文の作成・発表の進捗に若干の遅延が生じている.このため,本来は平成30年度で本研究課題は終了する予定であったが,1年間の研究期間の延長を申請し,承認されている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,2編の論文の国際学術雑誌への受理を目指すことになる.その論文作成補助のために博士研究員を継続して雇用する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研費で行った研究の成果を論文として期間内に公表する予定であったが,論文作成・投稿が期間内に完了しなかったため,2019度経費は英文校閲費,論文投稿料および論文作成を補助する博士研究員の雇用費に充当する.
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