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2016 年度 実施状況報告書

試料温度制御下での鉱物のカソードルミネッセンス測定とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 16K05614
研究機関岡山理科大学

研究代表者

西戸 裕嗣  岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (30140487)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードカソードルミネッセンス / ルミネッセンス鉱物 / 試料温度効果 / 発光中心
研究実績の概要

鉱物が発現するカソードルミネッセンス(CL)について、特に試料温度効果を定量的に評価する方法を確立するとともに、実際の鉱物の結晶化学的キャラクタリゼーションへの応用を目指してきた。本研究により、新たな冷陰極型CL装置(Reliotron)が導入でき、立ち上げおよび調整を終え、低温度下でのCL発現挙動を観測可能となり、実際に使用し始めている。しかし、結露などの問題が発生し改善処置を講じる必要など課題もある。また、試料温度制御下でのSEM-CLスペクトル測定においては、分光に関する光路系を整備するとともに測定データの解析システムの構築を行い、実用化の目処を立てることができた。
実際の試料の測定に関しては、アクチベーター濃度や構造欠陥密度がCLの試料温度効果に大きく影響していることが明らかとなり、当初の予想が正しいことが示された。一方、試料依存性(鉱物の結晶化学性質の違い)が新たな試料温度効果への要因として見出された。これを解明するには、産地や産状を異にする多数の鉱物試料を用意し、結晶化学的性質をキャラクタリゼーションする必要もあり、新たな課題となっている。
本年度から取り組み始めた鉱物についての研究成果は、一部を学会発表として公表しているが、学術論文としては準備中であり今年度に投稿する。しかし、本研究における基礎的の成果として、従来から行ってきた鉱物のCLに関する研究に活用し、ジルコンや造岩鉱物のCLに関する学術論文を公表している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

・CL測定の技術的な検討:SEM-CL装置の光学系の調整は全て完了し、ルミネッセンス標準試料を用いて最終的な感度データの取得および補正計算プログラムの作成をほぼ終了している。これらの結果を実際の測定試料に適応し、標準光源により得られている参考標準値と比較する準備を行っている。Reliotronの作動調整を行い、低温度下での観測条件を決定しつつある。低温時の結露が光学系へ影響を及ぼすことが確認されたため、対処法を検討している。
・炭酸塩鉱物:試料温度制御下でカルサイトおよびマグネサイトのCLスペクトル定を全て測定し終えた。カルサイトのCLは、アクチベーター濃度により異なる試料温度効果を示すことが明らかとなり、特に高濃度の場合には濃度消光効果がCL発光強度に大きく影響している結果を得た。マグネサイトのCLは、明らかに構造欠陥による発光中心が試料温度効果に強く作用していることが示された。結果を解析し、両者について論文を作成しつつある。ドロマイトのCLは、アクチベーター濃度ならびにアクチベータイオンの占有サイトの違いにより複雑な温度消光過程を示すことから、測定試料を増やしてデータの取得する必要があり、対象試料の選定に当たっている。
・カオリナイト鉱物および石英:既に測定したCLスペクトルデータを波形分離解析により発光成分を単離し、アレニウスプロットから試料温度効果に対応する活性化エネルギーを算出することができた。得られた結果は、いずれとも試料依存性が高いことが判明したため、現在試料の選定ならびに試料処理に取り掛かっている。

今後の研究の推進方策

・温度制御下でのCL観察およびスペクトル測定を行える段階に入り、実際の鉱物試料を対象に感度補正、温度校正などを検証し、逐次得られたデータをルミネッセンス標準試料の値と比較することにより、色再現性ならびに測定精度の向上に努める。また、解析過程で大量の数値データを扱うため、エクセルのマクロを用い信頼性が高く効率のよりプログラムを新たに作成したい。Reliotronについては、低温時の結露をいかに防ぐかが大きな課題となっており、液体窒素導入経路の断熱化や光路系への乾燥窒素ガス導入へ向け装置の改良に取り組む。
・鉱物のCLは、試料温度に大きく依存していることが明らかとなってきた。したがって、CLの使用温度効果を定量的に求めることにより、これを指標として鉱物生成時の地質学的な環境や生成後の変成履歴や熱史を評価できるようにしたい。そのために、CLに大きく関係する不純物元素や構造欠陥など結晶化学的性質についても、質量分析法(LA-ICP-MS)、電子スピン共鳴法(ESR)、顕微ラマン分光法などにより決定することを試みる。
・研究成果の公表:炭酸塩鉱物については、カルサイトおよびマグネサイトのCLスペクトル解析を終え、結果を考察中であるが、ほぼその目処が立ち今年度中には学術論文として投稿する。ドロマイトについても、今年度中には測定を終え、可能な限り論文投稿したい。カオリナイト鉱物および石英のCLについては、多くの測定結果を得ているものの、両鉱物ともに試料依存性が強いことからさらなるデータの取得を必要とし、成果の公表は今年度末以降の見通しである。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件)

  • [雑誌論文] Recurrent magmatic activity on a lithosphere-scale structure: Crystallization and deformation in kimberlitic zircons2017

    • 著者名/発表者名
      Tretiakova, .I, Belousova, E., Malkovets, V., Grifin, W., Piazolo, S., Pearso, N., O'Reilly, S., Nishido, H.
    • 雑誌名

      Gondwana Research

      巻: 42 ページ: 126-132

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Cryptoperthitic and replacive intergrowths with iridescence in monzonitic rocks from Cerro Colorado, northern Chile2016

    • 著者名/発表者名
      Nakano, S., Kojima, S., Makino, K., Kayama, M., Nishido, H. and Akai, J
    • 雑誌名

      European Journal of Mineralogy

      巻: 28 ページ: 355-374

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cathodoluminescence and Raman Spectromicroscopy of Forsterite in Tagish Lake Meteorite, Implications for Astromineralogy2016

    • 著者名/発表者名
      Gucsik, A., Gyollai, I., Nishido, H., Ninagawa, K., Izawa, M., Jager, C., Simonia, I., Ott, U., Szaniszlo, C. and Kayama, M.
    • 雑誌名

      International Journal of Spectroscopy

      巻: 2016 ページ: 1-8

    • DOI

      doi.org/10.1155/2016/1751730

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Cathodoluminescence characterization of feldspar minerals from granite- syenite rocks in Iwagijima Island, Ehime Prefecture, Japan2016

    • 著者名/発表者名
      Maki, S., Ohgo, S. and Nishdio, H.
    • 雑誌名

      Naturalistae

      巻: 20 ページ: 13-18

    • 査読あり
  • [学会発表] 河川堆積物の細粒化が石英のカソードルミネッセンスに及ぼす影響2017

    • 著者名/発表者名
      大郷周平・長島佳菜・西戸裕嗣
    • 学会等名
      2016年度ESR応用計測研究会
    • 発表場所
      奈良
    • 年月日
      2017-03-01 – 2017-03-03
  • [学会発表] 炭酸塩鉱物の構造欠陥による青色カソードルミネッセンス2017

    • 著者名/発表者名
      草野展弘・西戸裕嗣・能美草太・大郷周平
    • 学会等名
      2016年度ESR応用計測研究会
    • 発表場所
      奈良
    • 年月日
      2017-03-01 – 2017-03-03
  • [学会発表] 炭酸塩鉱物におけるカソードルミネッセンスの特異な試料温度効果2017

    • 著者名/発表者名
      西戸裕嗣・草野展弘
    • 学会等名
      2016年度日本地質学会西日本支部例会
    • 発表場所
      宮崎
    • 年月日
      2017-02-18 – 2017-02-18
  • [学会発表] Temperature effects on CL emissions in Mn-activated carbonates2016

    • 著者名/発表者名
      Kusano, N., Nishido, H. and Noumi, S.
    • 学会等名
      AGU2016 Fall Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2016-12-12 – 2016-12-16
    • 国際学会
  • [学会発表] ns2 type luminescence in Pb-bearing carbonates using cathodoluminescence2016

    • 著者名/発表者名
      Noumi, S., Kusano, N. and Nishido, H.
    • 学会等名
      AGU2016 Fall Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2016-12-12 – 2016-12-16
    • 国際学会
  • [学会発表] Cathodoluminescence study of secondary minerals in basaltic eucrites2016

    • 著者名/発表者名
      Kanamaru, R, Yamaguchi, A. and Nishido, H.
    • 学会等名
      7th Symposium of Polar Science
    • 発表場所
      Tachikawa, Japan
    • 年月日
      2016-11-29 – 2016-12-02
    • 国際学会
  • [学会発表] ジルコンのカソードルミネッセンスに及ぼす放射線損傷の評価2016

    • 著者名/発表者名
      土屋裕太・鹿山雅裕・西戸裕嗣・能美洋介
    • 学会等名
      日本地質学会2016年年会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-12
  • [学会発表] CL emission mechanism of Pb-bearing carbonates2016

    • 著者名/発表者名
      Noumi, S., Kusano, N. and Nishido, H.
    • 学会等名
      Goldschmidt2016
    • 発表場所
      Yokohama, Japan
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-07-01
    • 国際学会
  • [学会発表] Provenance study of Asian dust using cathodoluminescence spectrum of single quartz grain2016

    • 著者名/発表者名
      Nagashima, K., Nishido, H. and Kayama, M.
    • 学会等名
      Goldschmidt2016
    • 発表場所
      Yokohama, Japan
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-07-01
    • 国際学会
  • [学会発表] Cathodoluminescence study of silica minerals in eucrites2016

    • 著者名/発表者名
      Kanamaru, R., Nishido, H. and Yamaguchi, A.
    • 学会等名
      Goldschmidt2016
    • 発表場所
      Yokohama, Japan
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-07-01
    • 国際学会
  • [学会発表] 石英の衝撃誘起ガラス化とカソードルミネッセンスの系統的変化:新しい衝撃圧力計としての可能性2016

    • 著者名/発表者名
      常 昱・鹿山雅裕・田近英一・関根康人・関根利守・西戸裕嗣・小林隆道
    • 学会等名
      日本地球惑星連合学会2016年年会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-25

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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