研究課題
ジルコンの界面律速型成長モデルに,オストワルド成長のスケール則を適応して,モデルの高精度化を行い,ジルコンの年代値と年代測定位置からジルコン成長時間推定方法を開発した.この手法を西彼杵半島の長崎コンプレックス泥質片岩6試料中のジルコンに適応し,個々の試料の変成継続時間を1000万年から2000万年と見積もった.さらに,変成鉱物の成長速度の定式化を行い,西彼杵半島の長崎コンプレックスの変成鉱物粒径と拡散律速成長における成長界面不安定性から,界面律速型の成長カイネティクスが卓越することを指摘した.沈み込み帯で形成される高圧型変成岩では,豊富な流体が存在するため,変成鉱物の界面律速型成長が卓越する可能性がある.今回開発した変成継続時間推定法では,変成開始時間と終了時間を見積もることができる.西彼杵半島の長崎コンプレックス全体では,変成反応の開始時間が構造的上位ほど早く,下位へ向かって遅くなる.従って,全体の継続時間は約3000万年であり,変成反応が活性化する領域が構造的下位へ少しずつ移動することが分かった.炭質物温度計を用いた西彼杵半島の全体の温度構造は,構造的下位へ向かって温度が減少する傾向が認められ,変成活性用域の移動と変成温度の低下が徐々に進行したと推定される.また,泥質片岩に含まれる砕屑性ジルコンの年代も構造的上位から下位へ向かい徐々に若くなり,海洋プレートの沈み込みにより供給される付加物質が構造的下位に徐々に付け加わったことが推察される.上記研究内容の一部を国際誌2本に投稿し,受理公表された.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Contributions to Mineralogy and Petrology
巻: 115 ページ: -
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 114 ページ: 170~177
https://doi.org/10.2465/jmps.190423