研究課題/領域番号 |
16K05617
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
伊藤 久敏 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 上席研究員 (50371406)
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研究分担者 |
堀江 憲路 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00571093)
福山 繭子 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (40630687)
外田 智千 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60370095)
山田 隆二 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 主任研究員 (70343762)
福間 浩司 同志社大学, 理工学部, 准教授 (80315291)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 花崗岩 / 年代測定 / 古地磁気 / テクトニクス |
研究実績の概要 |
H28年度は主に黒部川花崗岩体北部での地質調査・試料採取を行い,U-Pb年代測定,古地磁気測定,全岩微量分析を行った. U-Pb年代測定では,7試料について年代測定を行い,6試料からジルコンのU-Pb年代を得ることができた.主な成果として,黒部川花崗岩体北部では,世界で最も若い(約0.8Maの)花崗岩が約10Maの花崗岩に直接貫入していることを確認した.これは黒部川花崗岩体の中心部で確認された状況(西に向かって0.8Ma,4~6Ma,8~9Ma,10Maと徐々に古くなる:Ito et al., 2013)と異なり,花崗岩の生成過程を考える上で貴重なデータが得られたと思われる.また,黒部川花崗岩体北部においても0.8 Maの年代や3Maの年代が得られたことから,Ito et al. (2013)で主張した内容(黒部川花崗岩が世界で最も若い露出花崗岩であること,および同花崗岩には複数の貫入イベントがあること)を確認することができた. 古地磁気測定では,10地点で試料採取を行い分析を行った.その結果,黒部川花崗岩体北部では岩体が一体としてテクトニックな変動を受けたことを示唆する結果が得られた.また,得られたデータの品質の観点から,花崗斑岩や苦鉄質包有岩,さらにかなり粗粒な花崗岩であっても,今回の方法(低温消磁+TSpin)による熱消磁により特有残留磁化を得られることがわかった.黒部川花崗岩の他の地域についても地熱地帯や尾根沿いを避けてサンプリングを行えば,黒部川花崗岩のテクトニクスを明らかにすることができると考えられた. 全岩微量分析では,3試料の分析を行い,各試料についてリチウム~ウランまでの39元素の含有量を明らかにした.本結果については,既存のデータとも合わせ,今後詳細に検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した黒部川花崗岩体北部での調査をほぼ終了することができ,また,新たな知見が得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,今後は,調査範囲を広げ,既存の調査が不十分な箇所(岩体の東部~南部)を中心に調査を行い,花崗岩の生成・冷却過程の解明,北アルプスの地形発達過程の解明に迫り,火山防災や地熱開発に関しての検討を進める.また,学会発表等により,順次得られた成果の公表を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
採取した試料の岩石薄片作成を外注しようとしたが,外注先が年度内に対応できないことが判明し,次年度で対応することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
岩石薄片作成の外注を優先するが,必要に応じ,その他の消耗品等に使用する.
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