研究課題
平成30年度は,黒部川花崗岩体中央部でのU-Pb年代測定を実施するとともに,岩体南部での古地磁気測定・U-Pb年代測定を精力的に実施した.その結果およびこれまでの結果を踏まえ,U-Pb年代測定により,黒部川花崗岩の生成時期に関して以下を明らかにした.黒部川花崗岩体北部は東部で2-3 Ma,中部で1-2 Ma,西部で~1 Maであり,西部ほど若い.岩体中央部では,東部で~2 Ma,中部で~1.2 Ma,西部で~0.8 Maであり,北部と同様に西部ほど若い.岩体南部では東部から西部で顕著な差がなく,1.2-1.5 Maに貫入した.黒部川花崗岩体の南東部で接する爺ヶ岳火山岩類は~1.5 Maを示し,黒部川花崗岩体南部では爺ヶ岳火山岩類噴出後に大きな時間間隙を経ずに花崗岩が貫入した.これらの結果から,第四紀の黒部川花崗岩は,マグマが一時期に固結・冷却したのではなく,2.5Ma頃から0.8 Ma頃にかけて複数回のマグマ貫入イベントにより形成されたことがより明らかになるとともに,1.5 Ma頃に黒部川花崗岩体の南東部で爺ヶ岳火山岩類の噴出イベントがあったことを明らかにした.古地磁気測定結果から,黒部川花崗岩が磁化を保持する温度(600℃程度)に冷却したのはブリュンヌ正磁極期(0.77 Ma以降)であり,北アルプスがこの時期に激しく隆起・削剥したことの新たな証拠を得るとともに,黒部川花崗岩体は一体となって傾動せずに上昇してきたことが推定された.これらの成果の一部は関連学会(地質学会,地球電磁気・地球惑星圏学会)で発表した.また,黒部川花崗岩を含む北アルプスの急激な隆起・削剥が伊豆弧の衝突と関連することを国際誌(GRL: Geophysical Research Letters)で発表した.
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Geophysical Research Letters
巻: 46 ページ: 1259-1267
10.1029/2018GL080579