研究課題/領域番号 |
16K05623
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
壷井 基裕 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60411774)
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研究分担者 |
谷水 雅治 関西学院大学, 理工学部, 教授 (20373459)
若木 重行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (50548188)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 同位体 / 花崗岩 / 地球化学 |
研究実績の概要 |
本研究は花崗岩類の研究において従来から広く行われてきたルビジウム-ストロンチウム法やサマリウム-ネオジム法などの放射壊変起源の同位体を用いた年代測定や成因解析の新たな手法として、主に液中レーザー掘削技術を応用することにより、花崗岩類を構成する鉱物の微小領域の極微量の試料を得、それらに含まれる同位体について、TIMS(表面電離型磁場型質量分析計)を用いて、精度良く分析する手法を確立することにより、鉱物のサブグレインにおけるアイソクロン年代測定や、同位体初生値等のデータから、従来得ることができなかった詳細な花崗岩マグマの生成・定置プロセスの理解をすることを目指している。放射壊変系としてまず初めに花崗岩類の同位体地球化学的研究では最も良く研究されているものの一つであるルビジウム-ストロンチウム系を選択した。また、研究対象の花崗岩類としては、従来から地質や地球化学的、同位体化学的研究が数多く行われ、岩石や鉱物についてのデータが充実している福島県南西部を中心に分布する只見川花崗岩類を選んだ。この花崗岩類について、電子顕微鏡による岩石ならびに構成鉱物の組織を中心とした観察とEDSを用いた元素分析を行った。また、実際に岩石・鉱物試料にレーザーの照射を試みた。電子顕微鏡による観察の結果、微小領域の同位体分析を行うにあたり、分析対象の岩石ならびに鉱物の詳細な組織の情報を得ることができた。このことにより、岩石や鉱物のどの部分において極微量のサンプリングを行えば、例えば花崗岩の形成年代と変質年代などといった意味のあるデータを得ることができるかについて有益な情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、花崗岩類について顕微レーザー掘削法を用いて岩石やそれを構成する鉱物の微小領域の同位体分析を行うことにより、鉱物のサブグレインの年代測定や同位体初生値の解析から花崗岩マグマの成因や進化過程について、従来に無い新たな詳細なデータを得ることを目標としている。岩石や鉱物の微小領域のサンプリングにおいて、例えば花崗岩類にはしばしば熱水変質した部分が認められるなど、サンプリングを行う領域について充分に吟味する必要がある。現在までに鉱物分離試料の同位体比測定は完了している。また、電子顕微鏡を用いて只見川花崗岩類の岩石組織ならびに鉱物内部組織を詳細に観察し、EDSによる元素分析を行っている。このことにより、今後の微小領域サンプリングにおける岩石や鉱物の採取位置の選択、ならびに採取試料から得られる同位体分析値の意味について重要な情報を得ることができている。以上のことからおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、レーザーを用いた試料採取について、実験条件の最適化を行う。また、近年マイクロドリリング技術も非常に進歩してきたことから、この技術も併用して花崗岩類を中心とした岩石を構成する鉱物の微小領域の試料採取を行うとともに、得られた微量試料について、ルビジウム-ストロンチウム放射壊変系を中心にTIMS(表面電離型磁場型質量分析計)を用いて精度の高い同位体分析を行い、鉱物のサブグレイン-アイソクロン年代の決定、ならびに初生値のデータから、花崗岩マグマの成因と形成、定置、定置後のプロセスについて解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に伴う消耗品類等について、予定していた使用消費量より少なく済んだため、次年度使用額が生じた。これについては次年度に請求した助成金と合わせて、主に実験に伴う消耗品類を購入するために使用する予定である。
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