本研究は顕微レーザー掘削法を駆使し、特に花崗岩類に着目して鉱物のサブグレインスケールでの掘削ならびに同位体分析を行うことにより、花崗岩質マグマの形成から固結までに至る詳細な年代履歴や同位体情報を得ることにより、従来から行われてきた岩石や鉱物のバルク分析では得ることができなかった詳細な岩石形成プロセスに関する情報を得ることを主な目的としている。平成30年度は、福島県南西部の南会津郡檜枝岐村周辺に分布する只見川古期花崗岩類について、花崗岩を構成する鉱物のサブグレインスケールでの微小領域レーザー掘削を行い、掘削した試料についてルビジウムーストロンチウム系の同位体分析を行った。鉱物の掘削部分の決定においては、事前に電子顕微鏡を用いた詳細な岩石と鉱物の組織観察を行っており、例えば目的鉱物中の一部に異なる鉱物が包有されていたり、変質した部分を避けることや、累帯構造を示す鉱物の場合の掘削部分の検討とその持つ意味等を十分に吟味検討した。その結果、同一鉱物において鉱物の中心部と周縁部でストロンチウム同位体初生値が異なる結果が得られた。また、花崗岩を構成する複数の種類の鉱物について同位体分析を行い、その同位体比や同位体初生値等を比較しながら、花崗岩質マグマの成因ならびに花崗岩体の形成プロセスに関する考察を行うことができた。さらに、本分析法における分析プロセスに伴うブランク等の検討も行い、掘削採取必要量の見積もりや分析値の信頼性に関する情報を得ることができた。
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