日本に広く分布する黒ボク土では、腐植物質がアルミニウムイオン(Al3+)やアロフェンと複合体を形成することで分解に対して安定な状態となり、土壌の炭素貯留に寄与していると考えられている。本研究では、黒ボク土の炭素貯留機能についての科学的根拠を示すことを目的とした。 研究期間全体と通じての研究成果は、腐植物質とAl3+の結合割合について,化学組成などか明確な標準腐植物質(段戸フミン酸とフルボ酸(D-HAとD-FA)および猪之頭フミン酸とフルボ酸(I-HAとI-FA))・結合部位数の異なる有機酸(イソフタル酸(結合部位:2点)、ピロガロール(結合部位:3点)および没食子酸(結合部位:4点))とAl3+試料を用い、比色法により定量した。得られた結果として、有機酸(1ppm)とAl3+(1~10ppm)の結合割合は、イソフタル酸では約17%、ピロガロールでは約24~32%、没食子酸では約16~24%であり、すべての試料においてAl3+添加量の増加に伴って増加した。一方、標準腐植物質とAl3+(0.1~10ppm)の結合割合は、D-HAでは約8~23%、D-FAでは約2~87%、I-HAでは約7~34%、I-FAでは約6~18%であった。しかしながら、標準腐植物質とAl3+との結合割合は、Al3+添加量の増減に関係がなく、有機酸と異なる傾向がみられたことが挙げられるが、令和元年度は、研究代表者の機関内異動に伴い業務が多忙となったこと及び研究代表者の体調不良により本事業に係るエフォートがとれず、令和元年度に予定していた実験を行うことができなかった。
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