研究課題/領域番号 |
16K05630
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
斉藤 学 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60235075)
|
研究分担者 |
春山 洋一 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00173097)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 禁制遷移 / 放射寿命 / イオンビームトラップ / 分光計測 / プラズマ |
研究実績の概要 |
トラップに蓄積された準安定状態にあるイオンの放射寿命の精密測定において、トラップ内の残留ガスとの衝突によって消滅するイオン数を評価することが必要になる。そこで本年は、トラップに閉じ込めた3価Xeイオンの蓄積数の時間変化を、トラップから逃れてくる2価Xeイオン数を測定することによって決定する実験を行った。逃れてくる2価イオンは蓄積3価イオンと残留ガスとの電子捕獲衝突によって生じたものであるので、この2価イオン数の時間変化は蓄積3価イオン数の時間変化に比例している。具体的に実験は、トラップ外へ逃れたきたイオンの中から2価Xeイオンだけを電場によって弁別し、イオン数の時間変化をマルチチャンネルスケーラ-に記録した。この測定で、トラップに蓄積されている3価イオンの蓄積寿命を誤差0.5%程度で決定できた。この精度は、放射寿命の測定値を補正するうえで十分な精度である。 放射寿命の決定は、イオンが準安定状態から基底状態に遷移する際に放出する光子を測定することによって行う計画である。その測定に向けて、放出光子を測定するための光学系を設置した。具体的には遷移による放出光子を選択をするためのバンドパスフィルターと光子計数用の光電子増倍管から構成される光学測定系をトラップに設置した。さらに十分な統計で光子を計数するために、1回あたりの測定時間を短くすることで、より多数回の繰り返し測定を可能にした。具体的には、10ミリ秒のオーダーの放射寿命に対して1回の測定あたり測定時間が1秒必要であったシステムを、測定時間が100ミリ秒のシステムに変更した。これによって、これまでに比べて1/10の測定時間で同程度の統計のデーターを取ることができるようになり、多数回の繰り返し測定によって放射寿命測定の精度を高めることが可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画は、蓄積イオン数の時間変化の評価方法の確立、および光学測定系の設置とテストであった。これらについては実施済みであり、おおむね計画通りに研究が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
確立した測定法を用いて、2P3/2状態Xe3+イオンの2D3/2状態への寿命測定実験を行う。過去の他グループによる測定結果および理論計算結果と得られた結果を比較し、より正確な寿命の値を検討する。 得られたXe3+イオンの測定結果は、成果のまとまった段階で国内、国際学会で発表する。 本年度内で2P3/2状態Xe3+イオンの寿命測定結果がまとまったならば、Xe3+イオンの電子基底配置における他の準安定状態の寿命測定を目指す。具体的には、2P1/2準安定状態Xe3+イオンの寿命測定実験を進める。遷移による放射光子の波長はそれぞれの測定ごとに異なるので、バンドパスフィルターの交換と光学系の再調整を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
イオン検出用のマイクロチャンネルプレートを購入し設置する予定であったが、装置のテストをする計画でもあり、所有のセラトロン検出器によって実験を行った。そのため、当該助成金が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
装置のテストは終了したので、検出面がより広いマイクロチャンネルプレート検出器を計画通り設置し、イオンの検出効率を高める。これにより装置は完成となるので、本装置を用いた光子測定による放射寿命研究を進める。
|