研究課題/領域番号 |
16K05631
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
門 信一郎 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10300732)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 近赤外分光 / ダイバータ / 境界層プラズマ / MAP-II / パッシェン系列 / ヘリウム輝線 / リチウム分光 / 輝線強度比法 |
研究実績の概要 |
直線型ダイバータ模擬装置MAP-II (Material and Plasma) は,1999年より2013年にかけて東京大学(2002年まで東海地区,その後浅野地区)で稼働した.約20 mTの直線磁場を印可し,直径30 mmの円盤形LaB6陰極と円筒形陽極の間でアーク放電を生成する.陽極の下流には,直径約500 mmの2つのチャンバを備え,両容器の間はドリフト管で接続し必要に応じて差動排気が可能となっている(図1).全長約2 mであり上流側の第1チャンバは高密度実験に,下流側の第2チャンバはガス入射実験に適する.MAP-IIは2014年9月に東京大学から筑波大学に移設し,その後再稼働に向け,作業を進めている. 大気に曝露した後,陰極表面に水分や不純物が堆積している初期状態では,放電維持電圧が高くなり,電極同士を保持する絶縁板(ベークライト)の損傷のリスクがある.そこで,まず放電電圧が低いArガスを作動ガスとしてプラズマを生成した.典型的な放電電圧は30-50V程度である.イオン温度0.5 eV, 磁場20 mTにおけるアルゴンのラーマー半径は約30 mm程度あり,プラズマ柱の半径(15-20 mm)よりも有意に大きい.よってドリフト管を超えて下流まで到達するのは困難であり,放電は第1チャンバに限定される. 電極のコンディショニングが進むにつれ,放電維持電圧が下がってきたので,プラズマを生成した状態でガスを徐々にヘリウムに置換した.典型的な放電電圧は80-90V程度である.ヘリウムのラーマー半径は10 mm程度であり,第2チャンバまで到達することを確認した. 現在までに,放電回路,冷却系および真空系を部分復旧した段階であり,従来の1/2~1/3程度のパワーの放電が実現された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置の再整備、再稼働作業は概ね順調に進んでいる。ただし、京都から筑波大学まで出張して行っているため、マシンタイムの調整等のため出張日程が合わず、光学設置の詳細な測量や設計が十分には行えず、来年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度以降は,希ガス等のガス入射やリチウム等のシード物質導入実験,およびこれらのプラズマを対象とした計測法の開発・適用を計画している. MAP-II装置が従来の電流値による運転に復旧できた後,各種計測システムの再インストールに移る.特に,近赤外の分光器を設置し,可視から近赤外にわたる輝線スペクトルの計測を試みる. MAP-IIで得られる知見は,筑波大学所有の他の直線装置群(GAMMA10, APSEDAS)への適用,および相互検証も比較的容易であるため,より広いパラメータ領域,プラズマ条件においてダイバータ・境界層プラズマにおける素過程と計測適用性を議論することが可能になると期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半に、マシンタイム調整の都合で、出張日程があわず、光学部品等の測量・設計が遅れたため、確実なものを製作するために、翌年に持ち越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度に行う予定だった部品とあわせ、光ファイバーおよびカップリング光学系の製作、性能評価を行う。
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