研究課題
核融合を目指したプラズマ 診断法では可視光領域、あるい真空紫外領域スペクトル計測を用いることが通例であったが、本研究では、分光範囲を近赤外領域に拡張し、水素原子パッシェン 系列やヘリウム 輝線強度比 観測、リチウム入射時 モニタ手法 確立、トムソン散乱計測 信頼 性向上などを行い、近赤外領域 新たな可能性を開拓することを目的とした。具体的には、2014年に東京大学から筑波大学に移設した直線型の定常ダイバータ模擬装置MAP-II(Material and Plasma)、および京都大学のヘリカル型閉じ込め装置ヘリオトロンJにおいて近赤外分光の適用を試みている。本年度はMAP-II装置の放電回路の整備をすすめつつ、予定を前倒ししてヘリオトロンJにおける予備的計測を開始した。当初目標のうち、汎用性の高い小型の近赤外分光(898 - 2130 nm)を用い、(i)可視および近赤外域の分光器をそれぞれ用いた感度較正法の実施、(ii)感度較正における2次回折光の影響評価、(iii)水素原子パッシェン系列の観測、(iv)近赤外のヘリウム原子輝線を利用した衝突輻射モデルの検証、等を行った。その過程で、適切なロングパスフィルタを用いて、計測および較正実験の両者において、2次回折光を適切に除去するあるいは除外した計測を行う必要性が認識された。さらに、ヘリオトロンJにおいて、高エネルギー電子によるホットスポット形成に伴う黒体輻射が観測され、近赤外分光の有用性が高められた。MAP-II においては、安定抵抗回路を刷新し、主電源を接続することで、これまで補助電源のみの放電で20A未満に留まっていた放電電流を従来研究で用いていた30-45A程度まで増加させる準備が整った。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定を前倒しして、ヘリオトロンJにおける近赤外分光の予備的計測に着手した。ペレット入射によるパッシェン系列の発光、ヘリウム入射による近赤外の輝線の観測、高エネルギー電子によると思われる黒体輻射スペクトルを観測するに至った。一方、予備実験にもちいてる小型汎用の近赤外分光器では十分な光量が得られないことが認識された。
今後は、当初目的に設定した、再結合プラズマにおける He Iの近赤外領域に存在する系列極限の観測、パッシェン系列を利用した衝突輻射モデルの検証を行う。本システムの応用として、真空紫外ー可視ー近赤外における感度較正、リチウムをはじめとする不純物入射に伴う発光の広帯域なスペクトルの計測への適用を検討し、近赤外分光のプラズマ診断研究における潜在的な可能性を見出していく。さらに、より特定の研究目的に合致した高性能の分光器を導入し、簡易分光器では困難であった高時間分解計測、あるいは高波長分光計測への展開、能動分光への応用を念頭におく。
(理由)当該年度の研究において、近赤外領域の分光計測において2次回折光をカットする最適なフィルタを選定する必要性を認識した。複数の仕様のものをテストするシステムの自作、方法論の確立にまず力点を置き、既存のフィルタの検証を行うところまで実施した。複数のフィルタの詳細な適用可能性検証と最適化は翌年度に持ち越すことにした。(使用計画)2017年度に行う予定だった近赤外分光器の詳細な選定を行い、ダイバータ模擬装置MAP-IIやヘリオトロンJでの計測を実施する。
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