研究課題
昨年度に引き続き、原子核反応過程及び量子電磁気学過程を考慮した新しい粒子シミュレーションコードの開発を進めている。昨年度は、レーザー駆動ガンマ線を介して起こりうる量子電磁気学過程として、電子・陽電子対生成及びコンプトン散乱を取り込んだ。これに対し今年度は、超高強度レーザーを照射した固体表面で放射反作用を介して発生する高輝度のガンマ線が、固体内部を伝播する時の原子核との光核反応を粒子コードへの組み込んだ。まず最初に、光核反応(γ,n反応)により発生する中性子線の評価を目的として、いくつかの原子核に対する光核反応過程の取り込みを行った。反応断面積のデータをテーブルとして用意し、ガンマ線のエネルギーから反応確率を計算し、モンテカルロ手法を用いて(γ,n)反応をモデル化した。反応により発生する中性子も粒子コード内で超粒子として扱った。また、光核反応の断面積はアメリカ国立標準技術研究所(NIST)が提供している断面積を用いている。開発したコードを用いて、レーザー駆動ガンマ線を介して発生する中性子線の評価を行った。まず、中性子発生数のターゲット依存性について検討を行った。全反応断面積が物質に依存すると同時に、反応閾値も一桁ほど幅がある。全般的な傾向としては、高Zになるほど全反応断面積は大きくなる。反応閾値はBeが最小で炭素が最大、その後高Zになるにつれ緩やかに減少する。このため、中性子発生数はターゲット原子とガンマ線のエネルギースペクトルにより変化する。そこで、レーザー固体相互作用によるガンマ線発生から中性子発生までをコンシステントに計算することで、レーザー固体相互作用による中性子発生において最適なターゲットの探査をおこなった。その結果、集光強度が5×10^22 W/cm^2程度の短パルスレーザーを利用した場合は、高Zの金などのターゲットが中性子発生効率が高いことが示された。
2: おおむね順調に進展している
研究申請書における本年度予定であった、光核反応の粒子コードへの組み込みを完了し、それを用いたレーザー駆動中性子の発生についてのシミュレーションを実施しているため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。他の業務等との兼ね合いから学会参加ができなかった点は、本年度の反省点である。次年度は、国際会議も含め複数回の学会参加を予定しており、研究成果の発表をそこで行う予定である。
来年度も計画通り研究を推進する予定である。
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AIP Conference Proceedings
巻: 1947 ページ: 020021
10.1063/1.5030825