研究課題
まず,磁場生成用のキャパシターコイルを含むコーン付き中実球ターゲットを設計し,コーン外側から過渡的に印加した磁場のコーン内部への拡散を評価した結果,金(Au)の導電率によっては磁場の拡散が遅く,コーン内部に十分浸透しないことがわかった.また,磁場による熱伝導の非等方性についてはBraginskiiのモデルを用いているが,運動論に基づくシミュレーション解析によってモデルの妥当性を検証した結果,アブレーションにより最大15%程度の差異のあることが明らかになった.一方,強磁場下における超高強度レーザーとプラズマの相互作用については,磁場がレーザーフィラメント内から排斥され,フィラメント周囲で圧縮されることが明らかになったが,生成される高速電子のスペクトル特性は大きく変化しないこともわかった.次に,外部磁場による高速電子ガイディングの効果を統合シミュレーションにより総合的に評価した結果,磁場生成用レーザーの照射タイミングは最大圧縮時より早い時刻の方が,コア加熱効率の良いことがわかり,最大1.8倍向上することを明らかにした.更に,高エネルギーイオンによる補助加熱については,光圧によるイオンの直接加速を用いるためコーンチップを低密度CHフォームで単にコーティングしただけでは,イオンビームの発散が大きく,コア加熱に適さないことがわかった.そこで,まず,コーン壁面に沿った電子密度増加に伴う静電場の誘起を抑止するためターゲット構造をテーパーなしとし,CHフォームの凹面変形による発散を補償するためCHフォームを凸面にした.この結果,イオンによる加熱効率は約2倍向上したが,電子による加熱効率がおよそ半分に減少したため,総合的なコア加熱は向上せず,ターゲット構造の最適設計が必要であることがわかった.
1: 当初の計画以上に進展している
コア加熱効率に大きな影響を与える高速電子の燃料コアへの外部磁場によるガイディングについて,キャパシターコイルのコイル電流による磁場生成の過渡応答を計算した結果,十分な磁場強度が得られることはわかったが,磁場のコーン外側から内側への拡散スピードは,コーン材である金(Au)の導電率によっては遅すぎることがわかり,定量的な評価のためにはWarm Dense Matter領域における金(Au)の導電率を実験的に測定する必要のあることがわかった.磁場による電子熱伝導の非等方性が輻射流体運動に与える効果は,概ねBraginskiiモデルでシミュレーションできており,強磁場下におけるレーザープラズマ相互作用の粒子コードによるシミュレーションでは,磁場が高速電子のスペクトル特性に大きな影響を与えないことがわかった.また,2次元加熱燃焼コードの開発が進んだため,高速電子ガイディングの効果について2次元統合シミュレーションが可能となり,加熱レーザーの入射タイミングとコア加熱の効率向上の関係が示され,大阪大学におけるFIREX統合実験の結果と比較でき,両者は定性的に一致していた.一方,高エネルギーイオンによる補助加熱については,ターゲット構造の最適化が当初の予定より進展し,2次元統合シミュレーションによる解析も先行して実施できた.しかし,2次元加熱燃焼コードの高速化が十分ではないため,統合シミュレーションには極めて長い時間を要し,シミュレーション研究の効率が悪く,この改善が今後の課題である.
加熱全エネルギーを増加させるため,加熱用レーザーの長パルス化が計画されているので,高エネルギーイオンによる補助加熱について,長パルスでもイオン加速が持続するターゲット構造を設計し,高エネルギーイオンによる加熱効率向上を目指すと伴に,高速電子による加熱効率が低下しないよう工夫する.また,加熱用レーザーLFEXは4ビームで構成されているため,時間的(または空間的)に重ね合わせることにより,ドライバ粒子特性の同一パルス長下の平均レーザー強度に対する依存性(または同一レーザー強度下のパルス長に対する依存性)を調べることができる.そこで,種々のレーザーパラメータに対するドライパ粒子の特性を評価し,FIREX基礎物理実験の結果と比較しつつ,コア加熱を最大化するために最適なレーザーパラメータを明らかにする.更に,強磁場中では,レーザーが円偏光波であるホイッスラーモードにより高密度プラズマ中に侵入できるので,粒子コードを円偏光が扱えるように改良して,円偏光レーザーの高密度プラズマ中における伝播とレーザーから電子へのエネルギー付与の特性を解析し,円偏光レーザーによるコア加熱効率を評価する.その他,各シミュレーションコードのシミュレーションモデルを改良しながら高速化も図り, 統合シミュレーションの精度を上げて,FIREX統合実験の解析を行う.
出席を予定していた国際会議の開催時期が,3月から4月に変更になったため,その旅費を年度内に執行できなかった.
4月に旅費として利用する.
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すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件)
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