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2016 年度 実施状況報告書

水の微視的理解に向けた中性水クラスターのサイズ選別振動分光研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K05640
研究機関東北大学

研究代表者

松田 欣之  東北大学, 理学研究科, 助教 (70400223)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード水クラスター / 赤外分光 / 真空紫外外光イオン化 / サイズ選別レーザー分光
研究実績の概要

水クラスターのサイズ選別赤外分光を行うには、水クラスターをイオン化できるエネルギーの真空紫外光源が必要である。希ガスジェットを媒体とした真空紫外光源を平成28年度より開発中であり、間もなく水クラスターのイオン化光源として導入できる段階にある。本研究課題の基盤技術である真空紫外光イオン化検出赤外分光法により、現在展開している水和クラスターの構造解析やイオン化誘起プロトン移動反応ダイナミクス研究において、波長可変の真空紫外光の導入など同分光法の改良などをすすめた。上記の希ガスジェット用いた真空紫外光源の開発後、それらの技術の組み合わせにより、水クラスターの赤外分光を行う段階へ展開する。また赤外分光による水クラスターの構造解析には、量子化学計算に基づく振動スペクトルシミュレーションとの比較が必要となる。現在、各種の構造探索法に基づく異性体の探索とそれらの構造最適化および振動スペクトルのシミュレーションを進めている。第一段階として、小サイズの水クラスターの構造を解析を目指しているが、大サイズの水クラスター研究への展開を目指して、大サイズクラスター生成に有利な、超音速ジェット噴出時に水の加熱が可能な高温ノズルも現在開発中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題の計画どおり、水クラスターの赤外分光に向けて、水クラスターの光イオン化に必要な真空紫外光源の開発と分光技術の改良を進めている段階であり、おおむね予定通り準備が進められている。また本研究課題の基盤となる真空紫外光イオン化検出赤外分光法を用いて多種の水和クラスターの構造解析等の研究を進めており、それら改良等が順調に進められている。

今後の研究の推進方策

現在開発中の希ガスジェットを用いた真空紫外光源の開発を遂行するとともに、開発が完了した水銀を媒体とした真空紫外光源を用いて、水クラスターのソフトイオン化およびそれによる質量分析を行う。続いてそれらの光源を、真空紫外光イオン化検出赤外分光法に導入し、水クラスターのサイズ選別赤外分光研究を行う。同時に、それら光源を用いた真空紫外光・電場イオン化法の開発や改良により、より精度の高い分光法を確立する。それらの手法によって得られた分光データをもとに、水クラスターの構造決定およびその水素結合ネットワークの理解を目指す。

次年度使用額が生じた理由

当研究課題である希ガスジェットを用いた真空紫外光源の開発に向けて、実際の実験状況を踏まえて計画、作図等をすすめると共に、本研究課題において現時点で分光手法に必要な改良を進めている。その中で、真空紫外光発生の媒体である希ガスジェット用の真空チャンバー製作を慎重に進める必要があり、その仕様および製図について作製を依頼する業者と相談しながら、最終図面の確認を詰めを行っている段階である。繰越(B-A>0)が生じているが、おおむね最終図面が出来上がっており、直近に製作を業者に依頼できる状況にある。

次年度使用額の使用計画

希ガスジェット用の真空チャンバーの仕様の決定およびその最終図面がほぼ出来上がっている状態にあり、繰越金および次年度予算の一部を用いて、本課題研究において重要課題の希ガスジェット用の真空チャンバーの製作に取り掛かる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Infrared spectroscopic investigation of the acidic CH bonds in cationic n-alkanes: pentane, hexane, and heptane2016

    • 著者名/発表者名
      Min Xie, Yoshiyuki Matsuda, Asuka Fujii
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. A

      巻: 120 ページ: 6351-6356

    • DOI

      10.1021/acs.jpca.6b05567

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Are cationic CH bonds aprotic or protic?2016

    • 著者名/発表者名
      Y. Matsuda
    • 学会等名
      平成28年度化学系協会東北大会
    • 発表場所
      福島県いわき市
    • 年月日
      2016-09-16 – 2016-09-17
    • 招待講演
  • [学会発表] Infrared spectroscopic investigation of proton transfer in pentane-water cluster cation2016

    • 著者名/発表者名
      T. Endo, Y. Matsuda, A. Fujii
    • 学会等名
      平成28年度化学系協会東北大会
    • 発表場所
      福島県いわき市
    • 年月日
      2016-09-16 – 2016-09-17
  • [学会発表] ペンタン二量体の正イオンの赤外分光2016

    • 著者名/発表者名
      松田欣之、遠藤寛也、藤井朱鳥
    • 学会等名
      第10回分子科学討論会
    • 発表場所
      神戸市
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-15
  • [学会発表] ペンタン-水クラスターの赤外分光:ペンタン正イオンにおけるプロトン供与性2016

    • 著者名/発表者名
      遠藤寛也、松田欣之、藤井朱鳥
    • 学会等名
      第10回分子科学討論会
    • 発表場所
      神戸市
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-15
  • [学会発表] ジオールのイオン化誘起分子内プロトン移動反応に関する赤外分光研究2016

    • 著者名/発表者名
      松浦歩、松田欣之、神山貴大、藤井朱鳥
    • 学会等名
      第10回分子科学討論会
    • 発表場所
      神戸市
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-15
  • [学会発表] Infrared spectroscopic investigation on CH bond acidity in cationic alkanes2016

    • 著者名/発表者名
      Y. Matsuda, T. Endo, A. Fujii
    • 学会等名
      International symposiumu on molecular spectroscopy 71st meeting
    • 発表場所
      Champaign-Urbana, IL
    • 年月日
      2016-06-20 – 2016-06-24
    • 国際学会
  • [学会発表] Infrared spectroscopic study for the hydrated clusters of pentane cation2016

    • 著者名/発表者名
      T. Endo, Y. Matsuda, A. Fujii
    • 学会等名
      International symposiumu on molecular spectroscopy 71st meeting
    • 発表場所
      Champaign-Urbana, IL
    • 年月日
      2016-06-20 – 2016-06-24
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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