研究実績の概要 |
【アミノ酸の原子衝突電子分光】生体分子やクラスターの測定を可能にするため超高感度のペニングイオン化電子分光器の開発を行った。その実験結果と対比しながら、回転異性体の安定構造に関する知見を得た。アミノ酸としてアラニン, セリン, システインを対象とし、異性体の安定性においてエントロピーの効果が重要であることを見出した。実測したペニングイオン化電子スペクトル (PIES) と、計算された内部エネルギーまたは自由エネルギーをもとにボルツマン分布で重ね合わせたスペクトルを0 , 298 , 400 Kで比較した。実測PIESは最安定構造EQ0のみの理論スペクトルでおおむね再現されるが、異性体に由来するピークが含ま出ることが分かった。生体分子としては、代表的な糖であるグルコースについて実験を行うことができた。 【アミノ酸の異性体探索計算】そこで異性体探索を行うと、例えばアラニンでは、EQ 11 個、TS 31 個が見出され、温度の上昇に伴いエントロピーの寄与で安定構造が反転することを見出した。この反転は、分子内水素結合と密接に関係していると結論付けられる。システイン、セリンに関しても同様の結果が得られた。 【金属分子クラスターの質量分析】チタンとランタノイドにケトン類が結合したクラスターを対象に、質量スペクトルと量子化学計算で金属分子相互作用を研究した。金属試料にはTiO2粉末を固めたものや棒状のTi, La, Er, Smを用い、配位子にはアセトン(CH3COCH3, AC)やメチルエチルケトン(CH3COC2H5)を用いた。質量スペクトルには、縮合反応によると思われる生成物の系列が観測されたため、反応経路探索を実行した。また、太陽電池に関連しTiOn(AC)m (n=0~2) の結合エネルギーを求めるとTiO2(AC)n TiO(AC)n ,Ti(AC)n の順に高いことが分かった。
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